閑話休題(制作秘話)
「……と言ったふうに、お話は始まるのよ!どう、あなた?」
「うん、なかなかいいんじゃないか?」
鼻高々な妻に、わたしはあいづちを打った。
「それより、『俺のカノジョに血と薔薇を』の続きはどうなってるんだ?もう4日も休載しているようだが……」
「げほげほ」
と、わざとらしい咳をしたあと、妻は、
「スランプよ」
と、意外にもあっさり筆が進まないことを認めた。
「なんかねぇ、けっこう書き進めたところで、キャラクターたちに愛着が湧いて、みんなを幸せにしたくなって来ちゃったの…そう思うと、当初の予定から、話がズレてしまって……」
制作裏話を赤裸々にかたる妻だった。
「幸せにしてあげればいいじゃないか。ハッピーエンド!いいじゃないか!バッドエンドよりずっといい!」
と、わたしが言うと、
「でも……このお話、書き出しと、結末は決めてあって、そうすると……」
そこまで言ったところで、
「いやいや、まだ結末は内緒よ!」
と、口を押さえるのであった。
「でも、ボチボチ書いてはいるのよ……私の心の中の葛藤にケリがつくまで、私は異世界にでも行ってるわ!」
「異世界か……まあ、ほどほどにがんばれ!」
「異世界は甘くないってところを見せつけてやるわ!」
と、妻はヤル気まんまんであった。
「……ところで、おまえが異世界に行ってる間、わたしはどうなってるんだ?」
「さあねぇ。異世界に召喚されちゃう人たちって、都合よく身寄りのない人たちだったりするから……そこのところもツッコミ満載しながら、進めて行くわ〜」
「いきなり主婦が失踪したり、JKが学校から消えたり、OLが会社からいなくなったりしたら、それはけっこう大事件だもんな……」
「交通事故に遭って、生まれ変わる、いわゆる転生ものも多いけど、私はあえてBBAのまんまあっちに行ってくるわ!」
ホホホッと、妻は高らかに笑った。
こんな妻ではあるがもし本当に異世界に行ってしまって、帰って来なくなったら、わたしの老後は寂しい独居老人になってしまうなぁ……なんて、しんみり考えつつ、
「ガンバって、行ってこい!」
妻の小説家になろう計画を、心から応援するわたしであった。




