ネカフェにGO!③
「バッズるっかなっ?
バッズるっかなっ?
さてさてほぅほぅ〜
バッズるっかなっ?
バッズるっかなっ?
さてさてふふ〜
バッ、ズッ、るっ、かぁ〜な?!」
座卓に向かって座り、妻のスマホを借りながら、画像投稿サイト『みてみん』に、先ほど投稿してきたわたしの画像へのリンクを、妻のすでに投稿済みの小説の中に挿入する作業をしているわたしの後ろで、
妻は歌いながら踊っていた…。
ああ、あの番組のノッポさんがいきなり喋り出した最終回は、感動というか、ビックリしたなぁ…と感慨に耽りつつ、作業を、終えたわたしは、妻を振り返った。
「…さあ、これでできたはずだよ…」
妻は上半身を傾けて、手のひらを上にして何かのっけているようにひじを曲げたポーズのところで踊りを止めて、
「ありがとう、あなたっ!」
そのポーズのままわたしに感謝の言葉を述べるのであった。
「編集実行ボタンは、おまえが押したいんだろう?さあーー」
わたしがスマホを差し出すと、
「わーい、わーい!」
妻ははしゃぎながら、ピョンとわたしの横に座った。
わたしより体重があるとは思えない、素早い身のこなしだった。
「はーい、では全国の女子高校生のみなさん、注目〜〜〜!あ、ポチッとな」
ボヤッキーが押していたのは飛び出た赤いボタンだったが、妻が押したーーもといタップしたのは、画面上の非リアルボタンだった。
ほんの数秒、わたしのイラスト画像が現れるまで、時間がかかった。妻はキラキラ目を輝かせていた。目尻のシワなんかは、わたしにはまったく気にならないよ…。
「なんか、イラスト、小っちゃいわ……」
妻の第一声は、それだった…。
「あなたの液タブで直接見たときには、
たしかにちょっと古さを感じる絵柄で、
そこがかえってノスタルジックに感じられてよい仕上がりに見えたのに……
この画像、なんか線が荒いし、色塗りも雑っていうか、薄く見えるし……
なんでこうなったのかしら……?」
わたしは妻の疑問に対する答えを持っていた。
「jpgに変換したわたしのイラスト画像を、
液タブからわたしのスマホに、Eメールに添付して送って、
その画像を写真として保存して、
先にスマホで登録しておいた『みてみん』のマイページにそれを掲載して、
その画像へのリンクを小説の中に貼り付けたから、
こうして挿し絵として挿入できたんだけど……」
「……けど、何か問題があったのね……?」
「うん、元のサイズは2MBくらいあったんだけど、
スマホにEメールに添付して、送った際、かなりデータが縮小されてしまってね、
40KBくらいになってしまったんだ、
だから画質が荒くなってしまったんだよ」
わたしの説明を真顔で聞いた後、なにか考えこむときの癖で、顎に拳をあてて、目をつむっていた妻だが、やがて、目を開くと、こういった。
「私、よくわからないんだけど、なぜ、液タブの画像をあなたのスマホ経由で投稿しなきゃいけなかったの?
あなたの液タブから、直接『みてみん』に投稿するんじゃ、ダメだった理由があるの?」
わたしは雷に打たれたように、ガビーンと衝撃を受けた!
「画像サイズが2MBじゃ大きすぎたとか…?」
「…いや…たしか3MBを超えなきゃよかったはずだ…」
「じゃあなおさら、なんで液タブから、直接投稿しなかったの…?」
「だって、その…事前にスマホで『みてみん』のID取ってしまっていたし…」
「液タブのEメールアドレスで、新しくIDを取得すればよかっただけの話じゃないの?」
「それは…あれは…あのときは…わたしは…………思いつかなかった…」
わたしは正直に、非を認めるしかなかった。
「だって…」
だが、弁解はしたかった。
「だって、わたしはあのときパニクってたんだ!ネカフェから出たい一心で、とにかく、なんでもいいから作業を、終えたかったんだ!」
「液タブから直接投稿するって、先に思いついてれば、それだけの作業ですんだだけの話じゃなぁい?」
「…ぐ!」
「それをなんでわざわざまわりくどいやり方選んで、画質落としちゃったかなぁ?」
「ぐぐぐっ!」
わたしは歯ぎしりした。
「あなたね、私は呆れてるんじゃないのよ?あなたのことを怒ってるんじゃあないのよーー!」
妻の言葉に、わたしはハタ、と顔を上げた。
「……え……?」
「私はね、私の大好きなイラストレーターさんである岬町子さんこと、
あなたのイラストがあの程度に見られることが、悔しいの!
……そう、悔しいのよ!
あなたのイラストの良いところ、半分も伝わってないんですもの、あれじゃあ!
私、それが悔しくて悔しくて…」
妻はうつむいて、いまにも泣き出しそうであった。
その妻を見つめるわたしの眼からも、いまにも涙のつぶがこぼれおちそうであった。
「あなたっ!」
「おまえっ」
わたしたちは、ガッシッ!とお互いを抱きしめた。
長いハグのあと、わたしは
「だからって、またネカフェに行って、投稿し直してこいとは…言わないよな?」
まだ腕の中の妻に尋ねた。
「さすがに私も鬼じゃないわ。ウイルス騒動が落ち着くまで、あそこには行かなくていいわ。宅Wi-Fiの再導入を検討しましょう!」
わたしの胸に顔を埋めているせいでくぐもった声で、妻は言ってくれた。
こうして、挿し絵は既出の三話に各々(おのおの)挿入されるのみとなり、次の挿し絵投稿はいったん見送りとなったのである。
それは、妻の小説家になろう!計画は続行し、わたしのマンガ家も目指しちゃおう!計画のほうは頓挫することとなったのを意味するが……
カナシクナンカナイヨー
(だって妻の奇行は小説がバズるまでまだまだ続くのだから…まだまだわたしと妻の二人三脚は続くのだから…)




