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くらう。  作者: 溝口智子
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 自宅に帰って名刺を印刷する。

 無職の男が人を探していると怪しすぎる。話を聞こうにも警戒されるのだ。

 だが名刺一枚あれば、人はそれで納得してくれる。今回は探偵という肩書の名刺とフリーライターというもの、二種類を作った。どちらも自称だが、今日から駆け出しの新人だと思えば嘘だとは言いきれない。


 旧式のプリンターがゴウゴウと鳴っている側で、慎一はあいりの恋人の情報が書かれている書類を読み込んだ。

 名前は江崎翔、二十五歳。住所は茅島町、ここから電車で二駅ほどだ。近隣の商社で営業事務をしている。あいりも同じ会社でバイトをしている。

 勤務態度はいたって良好。人当りも良く、身辺にトラブルはなし。

 友人は少なく、付き合いも薄いらしい。友人宅に泊まり込んでいる可能性は低そうだ。事故や事件に巻き込まれた形跡がないか先に調べた方がいいかもしれない。


 プリンターが一際高い音を立てて最後の名刺を吐き出して止まった。書類の後半は適当に流し読みして、パソコンにUSBメモリを差し込む。

 履歴に表示される日付はぽつぽつと飛び石のようにまばらだ。最近はパソコンよりタブレットなどを駆使しているのかもしれない。

 だが失踪当日に持っていたのならタブレットもスマートフォン同様、江崎翔とともに消えているだろう。残された情報はUSBの中だけだ。


 ワープロソフトの暑中見舞い用フォーマットを使った履歴が残っていた。筆まめなタイプらしい。暑中見舞いを送ったリストもある。

 江崎昭三・典子様。それはどうやら江崎翔の両親のようだ。今時の若者で両親に暑中見舞いを出すというのは珍しいのではないか。

 江崎昭三の住所はあいりが書いた実家の住所と近似している。ただ、微妙に違う。

 あいりが知っている住所は時枝町四丁目だが、江崎翔のデータにある暑中見舞いの宛て先はその隣の街区、時枝町三丁目だ。この差は埋めねばならないだろう。

 その他の宛て先の住所氏名も印刷する。塩谷に仕事を請け負うと連絡してから、慎一はデータをまとめた紙束を持って、あいりを訪ねてみることにした。


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