シェヘラザード
康幸の生活は、相変わらず緊張が伴う忙しい日々だった。ただ、そこに綾美の存在が加わったことで、所々に小さなクッションが入り、自分を解放できる時間ができるようになった。年に数回ではあるが、トロンボーンでの舞台の時間も戻ってきたし、やはりそれは充実した日々だと実感している。
「また綾美ちゃん、これダメだろ……。ちゃんと言ったのにな……」
綾美に渡したカードの請求書を見て、溜息をついていた。1ヶ月の請求が3万円にも達していない。確かキッチン用品や日用品も買い足してくれているから、これで足りるはずがない。きっと綾美が遠慮して自分で負担しているのだろう。
土曜日のたびに、綾美は康幸の家に来てくれて、泊まっていく。康幸の1番安心できる時間だ。できれば日曜日も泊まっていって欲しいのだが、どうしてかそうはしてくれない。綾美の会社になら、康幸の家からでも通勤可能な距離なのだからよさそうに思うのだが、どうやら康幸の体調を考えてそうしている節がある。
できるだけ一緒にいたいのだが、ちょっとその感覚にズレがあるようで歯がゆい。ひとりの時間は、今まで充分に過ごしたのだから、もうこれからは一緒でいい……。もう1度説得しようと思い至った。
「いらっしゃい」
「おじゃましまーす。今日ヤスさん早かったんだね。まだ、7時半だよ」
「当直明けの連勤だったんだけど、新しい非常勤の先生が1人入って、ちょっと早く帰れた」
「そうだったんだ……。もう少し早くこればよかったねぇ。本屋さん寄っちゃって」
「また一杯買ったねー」
「ふふ。新刊が出る週です! 待ち遠しかった〜」
綾美の読書は、かなり腰が据わっていると、最近知った。月に10冊以上読むらしい。意外と乱読で、小説からエッセイ、ハウツーものや漫画まで、何でも読むとのことだ。康幸は医学書以外はあまり読むことはなかった。まぁ、時間がないというのが一番の理由だが……。
「そうだ、綾美ちゃん。ちょっと、話がある。ここ、座って」
ちょっと怒った顔をしたので、綾美は少し緊張した。何叱られるんだろう……。なぜか最近、叱られる時は分かるようになってきた。さっさと、謝ろう……。
「カードの請求書、届いたんだけど……」
あぁ、そのことなのね! これは正直に謝ろうと、康幸の言葉を遮るように頭を下げた。
「すみませんでした! どうしても、我慢できなくて……。この間の牛肉、国産牛買っちゃったの。特売日で、ちょっと安かったんだよ。あと、マンゴーも……。1個2千円もするのが、千円になってて、ごめんね、食べてみたかったの。2千円のマンゴー。あと、お醤油とお味噌とお米も、そうだ、卵も。特売じゃないのに高いの買っちゃって。ヤスさん、安いの嫌かなぁと思って。ほんと、ごめんなさい。無駄遣いばっかり……。あっ、そういえば下仁田ネギも、めずらしく出てて……。贅沢しすぎました。以後、しません。ほんとにごめんなさい」
「……」
最後は、わざわざ席を立って、体を90度まで曲げている。康幸はあっけにとられて、次の言葉が出るまでに、しばし時間が掛かった。
「綾美ちゃん……、面白すぎ……」
康幸は、お腹を抱えて笑い出した。何がそんなにツボにはまったのか、下仁田ネギは康幸も美味しいと言って食べてくれていたので、それはよかったのかな、ということくらいしか頭に浮かばない。……、座ってもいいのだろうか?
「もう、早く座ってよ。……まいったなぁ。1つ確認なんだけど、ほんとにこの家のものは、全部カードで支払ったんだね。綾美ちゃん、負担してないんだね」
「はい……。ごめんなさい。今度から、欲望に負けたものは、ちゃんと自分で払います!」
「違う、違う! 逆だよ。もぉ、ほんとに……」
もうひとしきり笑って、康幸は説明しだした。
「あのね、あんまり請求が少なかったから、綾美ちゃんが負担してるんじゃないかと思ったんだよ。いつもご飯、色々種類作ってくれてるし、残った野菜とか肉とか、冷凍までしてってくれてるでしょ。一杯買ってるんだろうなぁって。この間のキッチン用品なんかも、あのカードで払ったし。もっと多いかと思ってたから」
「……だって毎日じゃないんだよ、買い物。それにしては、多かったはずだよ」
「それにね……、実はあのカードで綾美ちゃんの好きなもの色々買ってもらうつもりだったんだ。わざわざ言わなくても、そうするだろうって思ってたから……。前は、『女王様』はドンドン買ってたからねぇ……、そんなもんかと……。なのに綾美ちゃんったら、何にも買ってないでしょ」
「……あれ以上、何買うの?」
「洋服とか、カバンとか……。欲しいものいっぱいあるでしょ、女の子なんだし」
「えぇ〜! いいよぉ、一応私も働いてるんだから、自分のものくらい、自分で買うよ」
「買ってあげたいんだよ。ほんとは一緒に行って、選んであげたいけど、僕時間ないから……。綾美が喜ぶこと、したいんだ……」
その言葉に驚いたようで、綾美はゆっくり肩をすくめる。そのまま笑顔になったかと思ったら、ウンウンと頷いて、
「……ヤスさん、すっごく嬉しい。ありがとう」
と言って、目の前にいるのに、顔の横に両の掌を広げてぶんぶんと力強くバイバイしている。顔がくしゃくしゃに笑っていた。感情表現が時々綾美は人と違う……。とにかく、嬉しいらしい……。
「じゃ、そのつもりであのカード使ってね。この話は、これでおしまい」
さて、と席を立った康幸に向かって、綾美が両手を伸ばしてまだ座っていた。どうやら、引っ張って立たせてほしいと、甘えているらしい。足までバタバタしている。しょうがないなぁ。
「ほら、よいしょ」
引っ張った勢いで、綾美が腕の中に飛び込んできた。首に力一杯しがみついている。
「ヤスさん、だ〜い好き!」
随分あからさまだぞと思いながらも、やはり康幸もそう言われれば嬉しい。応えるように、しっかり綾美を抱きしめる。
「ヤスさん、キスして!」
顔を軽く突き出して目をつむっている。そっと唇に触れてあげた。
「もっと」
そう言われれば、応えない理由はない。今度はしっかり唇を覆う。ん? その先にはいかないのかな……。綾美はじっと康幸の顔を眺めて、しみじみと呟いた。
「幸せだなぁ……」
もう一度ギュッとしがみついて、綾美は離れた。それは、こっちのセリフだよ。続きは、また後でゆっくり……。
夕食の準備に取り掛かった綾美を手伝うといえば、「いいから休んでて」と言われるが、昨日の当直は結構寝られなかったので、何もせずに待ってると確実に寝てしまう。それでは、そのあとがもったいない……。
「いいよ、手伝うよ」
下心満載なことは綾美には内緒。2人でやれば、あっという間に終わるだろう。準備を始めた。
「今日午前中、練習場借りられたから、一緒に行かない」
翌日、朝食を終えた康幸が綾美を誘った。
「いいね。練習してる間、買出ししてようかな……」
「できれば、ピアノ伴奏お願いできないかな」
「いいよ。珍しいね……」
「今度、『シェヘラザード』があるんだ」
「わぁ、最初トロンボーンが大活躍の曲!」
康幸もニッコリ笑っている。もちろん、オケの一員としてアンサンブルを奏でるのは楽しい。しかし、やはり自分の聞かせ所がある曲は、また違う。これこそ、ソロパートの醍醐味である。
「シェヘラザード」は千夜一夜物語を音楽にしたものだ。リムスキー・コルサコフ作曲による交響組曲で、ロシアの作曲家らしく、いわゆる「ド派手」な曲である。
金管もトランペットにトロンボーン、ホルンは4本も入る。チューバまであり、これだけ見ても、どれ程の音量になるか、想像に難くない。
しかも、オーボエ、フルート、クラリネット、ひいてはファゴットに至るまで、技巧を凝らしたソロが全曲に渡りたっぷりとあり、とても素人オケでは技量が付いていかない難曲でもあるのだ。当然エキストラだらけになる。それ故に、聴いている者に、まるで映画でも見ているかのような興奮を味合わせてくれる名曲である。
物語はとてもシンプル。
昔ペルシャにシャフリヤールという王がいた。彼はある夜、最初の妻の不貞を知り、その妻と相手であった奴隷達の首を刎ねた。
そして女性不信に陥った王は、生娘である夜伽の相手の首を、翌朝には必ず刎ねるようになる。
困った側近が、自分の娘シェヘラザードを差し出し、毎夜面白い話を聞かせることにした。話の最後は必ず「続きは、また明日」と王に耳打ちし、王はその話聞きたさに、シェヘラザードの首を刎ねることはしなかった。
そして1001夜が過ぎた時には、2人の間には子供が生まれており、王はシェヘラザードを王女に迎えたという話である。
4つの物語を曲にしており、冒頭シャフリヤール王のテーマをトロンボーンが奏でて重厚感と懐疑心の織り交ざった音で始まる。
「ねぇ、やっぱり最初緊張する?」
「まあね。でも、その緊張がいいんだ。緊張がない舞台はダメだ。自分がどんな音を出すかは、分かってるからね。最高の状態で鳴らしたい」
「うんうん、だよね。歌も一緒。舞台に出る前は、胃が痛くなるし、出る声も分かってる」
「そうか。やっぱり、どんな声が出るか分かってるんだ。僕なんか、歌おうと思っても自分からどんな声が出るか、出してみないと分からない」
「そうね。分からない内は、まだダメだね」
つまり、分からないということは、行き当たりばったりの音を出しているということだ。それは声にしても楽器にしても、まだまだ初心者の域を出ない。訓練が、まるで足らない。
2人には広すぎる練習室が取ってあった。アップライトのピアノがある。スコアも準備されていて、康幸はトロンボーンを組み立て始める。
次に体のストレッチして、音出しを始めた。彼がルーティーンをしている間に、綾美は楽譜を確認する。初見なので、ザッと弾くべきパートを確認していく。どんどん楽器が鳴ってくるのを聴きながら、ああなるほど、金管にはこれくらい広い部屋の方が楽なのね……と納得する。ちなみに歌は、どちらでもいい。
第1楽章「海とシンドバッドの船」。
曲の最初から、合わせる。冒頭のトロンボーンの音が出た途端、綾美が止まった。
「ん、どうした?」
「ゴメン……。ちょっと、聞き惚れた」
お世辞ではなく、本当に……。やっぱり、ヤスさんの音は、いい。
「……。じゃ、もう一回初めから」
ちょっと笑って、もう一度吹く。次はちゃんとピアノを弾く。バイオリンのシェヘラザードのテーマを弾き、流れを作って行く。王のテーマは何度も現れ、最初からトロンボーンは忙しい。綾美は左手だけになることもあったが、練習の足しにはなったようだ。
第2楽章「カランダール王子の物語」。
カランダール王子のテーマをファゴットが奏でるが、これが結構ファゴット奏者の技量が一目瞭然となるため、プレーヤーにとっては戦々恐々とする部分である。途中曲調が変わる冒頭、ファンファーレのようにトロンボーンとトランペットの掛け合いがある。これは、指揮棒でしか合わせられないが、練習はインテンポで進めていく。ピアノでペットの代わりを務める。
第3楽章「若い王子と王女」。
牧歌的でメランコリックなメロディで、緊張が続いた2楽章後の、休息かの様な曲である。ここではクラリネットやフルートの流れるような旋律が、印象的だ。金管は出番が少ない。全体に官能的な色を帯びている。そんな物語を語っているのかもしれない。最後にシェヘラザードの主題がバイオリンソロで弾かれ、それこそまるで「今日のお話は、ここまでですよ」と王に耳打ちしているかのような終わり方をする。
難関の第4楽章「バグダッドの祭り。海。船は青銅の騎士のある岩で難破。終曲」。
船が難破する曲なので、すさまじく色んなパートが荒波を表現していき、翻弄される船を想像させる。どんどんテンポが速くなっていく一方なので、最後辺り、フルートやバイオリンは、プロでも必死の形相になる曲だ。トロンボーンももちろんその中に割って入っていかなければならず、これはピアノと練習した方が確実に流れが分かる曲である。
「ねぇ、このAlegro molto(快速に、元気に)、そんなに速いテンポなの?」
「指揮者による。僕が聞いた音源ではこの速さが存在する。これで吹ける様に練習だけはしとかないと」
「それでいくと、ペットと木管、バイオリンもか……大変だねぇ」
「ダブル・タンギングね……。それもこの曲の聴き所だからな」
「でも、この後のトロンボーンも、かっこいいのよねぇ。気持ちいいだろうね、ここ」
「分かる?」
嬉しそうなヤスさんに、人差し指でツンツンしたくなる。本当に音作りは楽しい。
3時間キッチリ練習し、街に繰り出した。
「綾美ちゃんて、ホントはピアノ科に行きたかったとか? 受験、両方した?」
「どうして?」
「初見安定してるし、コレペティでもいけそう。そういえば、初めて歌聞いた時も、ピアノも上手いんだろうなぁって思ったし」
「ありがとうございます。ピアノも好きだったけど、声の方が褒められたの。だから、ほいほい歌に転向しました」
「ほいほい……ね」
「はい、ほいほい」
ピアノは競争が激しい。まぁ歌もしかりなのだが、綾美の声はメゾ・ソプラノなので、ソプラノに比べれば活躍の場の競争率は雲泥の差なのだ。
何より、音楽に携わっている時間が4年延びればよかったので、どちらで入学しようが構わなかった。康幸の様に、将来音楽家になろうという強い意志はなかった。
「またできれば、頼みたいな……」
「いいよぉ。先に言ってくれれば、もう少しきちんと弾けるけど」
「今日ので十分だけど、初見って、目大変だよね。大丈夫? まだ、痛い?」
今日綾美は珍しく眼鏡をしている。日頃はコンタクトだが、昨日うっかり外さずに寝てしまったのだ。
「もう、ヤスさんが外させてくれないから〜」
「ごめん、ごめん。つい忘れるんだよ。僕は眼鏡外すだけだからねぇ」
そう、昨夜あれから食後の片付けをしている最中に、康幸が綾美に手を出し始め、そのままベッドに連れて行かれてしまい、その後シャワーを浴びるつもりだったのだが、康幸が隣であっという間に寝息を立て出したものだから、その顔を見ているうちにつられて2時間程寝てしまったのだ。夜中にシャワーを浴びることになった。
「ヤスさんは、ゆっくり寝られた?」
「うん。綾美ちゃんのどこかに触れてると、あっという間に寝られるんだよね。綾美ちゃんの肌、気持ちいいから」
いやいや、ヤスさんなら私がいなくても、きっと寝入りは10秒かからないよと突っ込みたかったが、子供の様に腕やお腹に手を触れて寝ていくヤスさんを思い出して、からかうのはやめておこうと言葉を引っ込めた。
「それなら、着けっぱなしにできるコンタクトにしようかな……」
「あれ、いいらしいよ。それも、あのカードでご購入下さい。僕のためでもあるんだから」
「僕のため?」
「これで、気にせずに襲える。ふふん……」
「もうっ、今までだって、ほとんど気にしてないでしょ」
「ははっ、バレたか……」
その日の夜、綾美が帰ろうとするのを康幸が引き留めようと、何度目かの説得をしていた。
「またこれで1週間会えないんだから、ここから会社行けばいいんじゃない?」
「そうしたらヤスさん一人で寝られないから、疲れ取れないでしょ?」
「それってさぁ、綾美ちゃんが、僕が隣にいるとゆっくり寝られないってこと?」
「そうじゃなくて、明日からまたハードな日が続くんだから、睡眠のリズム狂わしちゃいけないと思って。私が寝返りすれば、ヤスさんも気になるでしょ」
「ほら、やっぱり。僕が寝返りすると、綾美ちゃん目が覚めちゃうんだ」
「違うってば……。もう、分かった。今日だけだよ」
「よっし」
なんだかんだと言っても、やはりこうやって引き留められるのは綾美も嬉しい。けれど、「あの事故」のことを思うと、次の日が休みではないなら、一緒に寝るのは少し怖かった。康幸は車通勤なのだ。
「じゃ、今日はお話をしてあげます」
ベッドに入ってから綾美が言い出した。
「えぇ!? まずキスさせて」
「ダメです。お話を最後まで聞いたら、キスさせてあげます」
「何の罰ゲーム……?」
康幸の言葉はすっかり聞き流し、綾美は眼鏡を掛けて背をベッドヘッドに預け、文庫本を開いた。
「では、きょうは時代小説『高台寺蒔絵に導かれ』から」
それでも手や首にキスをし出す康幸を宥めながら、綾美はお気に入りの小説のストーリーを語り出した。
以外にも語り口調が上手い。時代小説だから、登場人物の身分や仕事の解説まで織り交ぜながら、起こった殺人事件の謎に迫っていく。
ベットサイドの明かりは緩やかで、綾美の少し低い声がまるで子守歌の様に頭に響いてくる。綾美の腕に触れながら、康幸は10分もせずに眠りに落ちていった。その寝顔を見つめながら、「おやすみ」とライトを切る。これで、たっぷり6時間は寝られると、綾美も瞼を閉じた。
翌朝、機嫌が悪い康幸は、紅茶を入れてベッドサイドに戻って来た。まだ寝ている綾美を見ながら、ベッドの端に腰かける。綾美の髪をかき上げた。
「まったく、うちのシェヘラザードは可愛い顔で寝る」
まだ寝ぼけている綾美の唇を奪う。「ううん」とやっと目覚めた綾美の口に、口移しで紅茶を飲ませる。
「ん……。おいし……。おはよ……。ね、もう一回」
と横になったままアゴを上げて、目を閉じる。キスのおねだりらしい。
「だーめ。昨日お預け喰らわしたの、誰?」
「あれ、ご機嫌斜めだ……。ケチンボ、ヤスさん! やっぱりもう日曜日は泊まらない……」
そう言って向こうを向いて拗ねるって……、計算なのか、まったく。
「……しょうがないなぁ」
それでもやっぱり、綾美の喜ぶ顔には勝てなさそうだ。「こっち向いて」と体を上に向けさせて、もう一度キスをしてあげると、綾美は康幸の頬を両手で挟んで、何度も自分から繰り返してきた。ん……、珍しいな……。康幸も思わず応える。
「ヤスさん、だーい好き」
最後にそう言って、やっと離してくれた。昨日の夜、そうすべきだったぞ。
「これから、日曜の夜は必ず泊まること。分かった?」
「はーい、先生」
そう返事をされ、今度は康幸が本気のキスをする。たっぷり綾美を味わって、やっとベッドから離れた。昨日のことは、とりあえずこれで許してあげよう。