小遣い稼ぎ
酒場にて騒ぎを払ったジョギーは暫く宿にこもっていた。
シシーから下ろした荷物の数々をぶちまけた様な床の中、唯一物が無い簡素なベッドの上で葉煙草を吸う。
と、戸が開いた。
「おーい、持って来たぜ」
「ルームサービスか?」
入って来たはビクター。
ビクターは散らかし放題の部屋を見て若干表情を引攣らせる。
「悪ぃが掃除はやってやれねぇな。オラ、三人の分だ」
「あん?シケた連中だったな」
大した数が無いと紙幣を数えながら呟き、ビクターは応える。
「まぁそいつらは木っ端な上、ここいらにゃ金の入りが悪い。狙うならそいつらの寝ぐらだな」
「ほぉ?分かってんなら行けよビクター」
「俺に鉄火場は無理だな。デカめの棺桶が出来ると葬儀屋が儲かるだけだ」
言いながら脚で床の上の物をどかし、椅子を引いて腰掛ける。
「お前がガモンらをブッ殺したあの山、あそこにゃ廃坑があるんだよ。昔はあそこで鉄が取れたんでな」
「今は?」
「ハドゥーンどもを使ってやってたんだが、新しい政府サマの対応のせいでそれが出来なくなっちまった。目ぇつけられた以上、掘ってもお上に吸われちまうしな」
曰く鉄鉱石の山だったと言う。
しかし採掘は危険が伴い、それの為にハドゥーン、先住民を使っていたと言う。
だが、この地域を収める新しい政府がそれを許さず、廃坑となってしまったのだ。
知った事かとジョギーは葉煙草の煙を吐き出す。
「で、酒場のチンピラどもの親玉はそこでシコシコやってるってか?」
「まぁな。だが誰も近寄りゃしねぇ。ガモンどもを除いてな」
ガモンと何らかの関係が有った。
それは協力関係か、或いは利権争いか。
「で、誰が居るってぇ踏んでんだ?」
「『線引きのキース』。1300の大玉だ」
その数字にジョギーは口笛を吹く。
「さっき貰ったモンが端金に見えるぜ。乗った」
「決まりだな」
ジョギーは立ち上がり、銃と共にポンチョを見に纏う。
そして去り際に振り向いた。
「おいビクター、そこにあるモンで取り返して欲しいモンとか有るのかよ?」
「あ?さぁな。お前のポケットの中なんざ一々見ねえから安心してカナリアやって来い」
「へーへー、上手く鳴いてやるぜ、ちゅんちゅんってな」
ひらひら手を振り、ジョギーは新たな賞金首とそれが隠す宝に小躍りしながら向かった。