表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セスタファンタジア―六つ星の幻奏―  作者: 新増レン
第一章 「世界を変える一歩」
6/34

第一章5  『村で最後の夜』

 


 ルシェが出て行って、アルダは剣の手入れを再開した。

 明日にもこの村を出発する。

 次の目的地は故郷の「エルメス村」だ。


「しかし、急にあんなことを言われるとは」


 先程の彼女の言葉には、アルダも驚いていた。

 興味がある節は感じていたが、まさか「同行したい」などと申し出るとは考えもしなかった。

 しかし、そうやって頼まれても、アルダには話の頭から断る気が全くなかった。


「明日からは、二人旅か」


 言葉に出すとどこか気恥ずかしい。

 今までは一匹狼のようで自由がきいたが、これからはルシェに配慮するのが優先的になるだろう。


「なんで、断る気がしなかったのか……」


 それが一番の不思議だったが、どことなく納得できていた。

 そんな思いの中、二日前、ルシェに語った旅の目的をふと思い出す。



 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇



「俺は、弟を探して旅をしているんだ」


「弟さん、ですか?」


「ああ。子供の頃に両親が離婚して、俺は母さんに、弟は父さんに引き取られたんだよ。その父さんの仕事関係の人から手紙が来て、父さんが二年前に亡くなっていたことがわかったんだ。それで、弟を探しに行くことにした」


「まだ、見つかっていないんですか?」


「弟はとっくに自立していてね。住んでいた街に行ってみても手がかりは全くなし。それで、俺は当てもなく探してるってわけだ」


「……」


「ま、ただの家族事情さ。案外あいつも元気にやってるのかもしれないけど、必ず伝えなきゃならないことがあるんだ」


「伝えること、ですか?」


「ああ。同じく二年前、病気で息を引き取ったんだ。俺達の母さんが」


「――!」



 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇



 剣の手入れを終えると、三人は揃って帰ってきた。

 叔父さんと叔母さんはニコニコとしていて、彼女の旅立ちを心から喜んでいる様子だ。

 しかし、彼らは少し目を赤くしていた。

 当然だろう。可愛がっていたことは一目でわかる。


 夜はアルダとルシェの送迎会が催され、叔母さんの渾身の料理が振舞われた。

 その後風呂を頂き、現在、ベッドに転がっている。


「……良い家族だ」


 そんなことを呟くと、ふと気になったことがあった。


「ルシェ、ちゃんと荷物まとめたかな?」


 思い立ったらじっとしていられず、アルダはルシェの部屋へと向かった。


 コンコン。


「あ、はい」


「アルダだけど」


「え!? ちょ、ちょっと待ってください!」


 ドタバタと中から物音が聞こえてきたが、用件だけを伝えることにする。


「ここでいい。荷物、ちゃんとまとめたか?」


「は、はい! 大丈夫ですよ!」


「そうか。……念のため言っておくが、肩にかけたり手に持ったりできるサイズのバッグにしろよ。かさばると大変だからな」


「ナップザックはどうですか?」


「うん。良いと思う。……それじゃ、確認できたことだし、また明日な」


「あ、待ってください!」


「ん?」


 扉の向こうの声は、アルダを引き留めた。


「迷惑、かけるかもしれませんけど、よろしくお願いします」


「……そういう時は、一緒に頑張ろうっていうんだぞ?」


「え……?」


「俺達はもう、旅の仲間だ。支え合うのは当たり前だろ」


「……! はい! い、一緒に頑張ります」


「ああ」


「え、えと、お、おやすみなさい」


「おやすみ」


 そう告げて、アルダはその場を後にし、部屋に戻るとすぐに横になった。

 そして、かけてある自分のコートを見て、明日の出発を実感するのだった。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ