第一章29 『不安と期待』
クライム王国の首都リルアームに辿り着き、ラルニスの号令で市民団体の代表や、他の大臣たちがある一室に集まっていた。
アルダとルシェは参加することが出来ない国家機密の会議だが、ラルニスの計らいで、スズの演説を後ろで聴くことが出来るようになった。
演説というのは、ラルニスの計画の最終段階に相当する。
臨時の直接国民投票を行い、女王の存続を決める手法だ。
当然、ラルニスには勝算があった。
最近の氷の女王は支持率がゼロと言われている。
そこで革命王の後継者である彼女が民衆の前に出れば、希望を抱かせることは可能となる。
「アルダさん。スズちゃんの顔、見ました?」
「ああ」
アルダとルシェは会議に参加することが出来ないので、宿の一室でくつろいでいた。日時が決まり次第、ラルニスとスズが教えに来てくれる手筈となっている。
先程のルシェの言葉の意味は、アルダにもわかっている。
あの夜。バルコニーでスズと話し込んだ後から、彼女の顔つきが変わっていた。
それは革命王の威厳を見せ、ラルニスでさえ足が震えるほどのオーラだった。
「あれなら、きっと大丈夫だ」
そう思わせる彼女の顔つきは、アルダを安心させた。
「演説、楽しみですね」
「ああ」
彼女の演説は世界を動かすだろうか。
たとえ動かずとも、その風を吹かせる可能性は大だった。
現時点、レイディアに革命王の「後継者」が王になっているケースはない。
後継者たちは自らの力に気が付いていないのか、それとも何かを待つように沈黙を保っているのか、それとも着々と台頭に近づいているのか、誰にもわからない。
そこで、前代未聞の事柄を成し遂げたならば、世界の注目は集まること間違いない。
「さて、革命の影響はどう出るのか……」
アルダは興味半分、不安半分でいた。
この数分後にラルニスが来て、演説を行う日取りが決まった。
明後日の午後三時だ。