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プロローグ
天才は実在する…そのことを齢13にして知ってしまった僕はあまりに哀れだったと思う。何が哀れかってそのときの僕は天才と対をなす、秀才を知らなかったことだ。だからまあ、正確に言えば幼稚な僕が知ったのは勉強も運動もできて、そのうえ外見も整っている。そんな奴がいるってことだけだった。僕はよく言えば純粋で、悪くいえば世間知らずのボンクラだったから、自分もそうなれるって思っちまった。これが僕、高下大夢の運のツキだった。これは天才と秀才というたったの二文字の熟語二つを知らなかっただけで大分人生を狂わせてしまった愚か者のお話。誰かの笑い話にでもなるのなら、それは面目躍如ってものだろう。もう僕には笑い話にもならないのだから。