幼稚園児の工作
今目の前にあるのはセロハンテープ、ボンド、はさみ、お菓子の空き箱、トイレットペーパーの芯、折り紙、色画用紙。
「みんなー自分のほしい家を作ってみましょうー」
「はーい」
こんなごみ同然のものであたしの理想の家が作れると思ってんの?先生も浅はかね。でもまあ、先生も最近苦労が多いからここは協力的にやってあげるわよ。
「きりちゃん、僕の家でっかいお風呂があるんだ!これでどんなに太ってる人がいても大丈夫だよ!」
あたしの家系に肥満はいないのよ、それとも将来あたしが太るとでも言いたいのかしら?
「僕の家なんて家の6割がトイレだよ!きりちゃん、僕の家の方がいいよね?!」
おかしいでしょ、それはおかしいでしょ。家と言うより公衆便所に近いわよ。
「僕の家なんて8割が玄関だよ!」
オープンすぎるでしょ、もういっそのことそんな家リフォームしてカフェかなんかにしたほうがいいわよ。
「あたしの家なんて窓が5つもあるんだよ!」
結構普通ね、むしろ少ないぐらいね。
「まあ、窓しかないんだけどね!」
10割窓だったのね。だめよ、それじゃプライバシーもあったもんじゃないわ。
「あたしなんて庭に米植えてるんだから!」
農家?あなたの家は農家なの?でも庭に植えてもたいした収穫はないわ、経営破綻が目に見えてるわよ。
「俺ん家かーちゃんととーちゃんのじーちゃんとばーちゃんがいる!5人!」
1人多いわよ、普通いても最高4人よ。複雑な家庭環境ね、きっと近いうちに問題が起こるわよ。
「僕ん家イリオモテヤマネコがいるんだから!」
それは特別天然記念物よ、あっという間に通報されて路頭を彷徨うことになりかねないわよ。
「きりちゃんはどんな家がいいの?!」
そうね、語ってあげましょうか。あたしの理想を。
「アルハンブラ宮殿」
「何それ?!どこにあるの?!」
「スペイン」
「すげぇ!きりちゃん海外進出だ!」
「当然よ、あたしが日本という小さな国に納まるはずないわ」
「で、それどんな家?!」
「・・・それは行ってみないとわからないでしょ」
「やっぱ人生最大の大きな買い物は見て確かめないとね!」
そうよ、ちゃんと確かめなくちゃ!騙されたって泣き寝入りなんてできないんだから!
「あ〜あれ?世界遺産だよ?住む?きりちゃんならきっと住めるよー多分」
「・・・そう」
「どうしたのー?住めるよ〜きっと!・・・多分!」
「もう黙ってよ、馬鹿にしてんの?してんのね、このあたしを。もういいわ、こっちにも考えがあるわよ、このあばずれ!」
「き、きりちゃんそんな言葉どこで覚えたの?!」
幼稚園児もいつか世界遺産に住めるわよ!