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幼稚園児の観察

「きりちゃーん、何見てるのー?」


あまり周りに興味を示さないあたしも、こればっかりは見ずにはいられない。何これ、なんなの?しゅわしゅわでもこもこでかちかちで木に引っ付いてるわ。


「あっ、カマキリの卵だ!」

「カマキリの?これが?」


建築ぼうやもなかなかの博識ね。こんなのにカマキリの次世代が詰まってるのね。


「これは?」


ぽっかりあいた穴。小さいけど、こんな所にあるなんてきっと深い意味があるんだわ。


「これアリの巣じゃないかなぁ?」


しばらく見ていると中から確かにアリが出てきて、外にいたアリが中に入っていってる。


「あぁ!きりちゃんそれはあんまりだよ!」


ためしにそこら辺にあった枝を突っ込んで塞いでみたら、アリは面白いぐらいに焦ってる。枝を上ったり下りたりして、楽しいったらありゃしない。アリたち、私に逆らってごらん。一瞬にしてあんたたちの地底帝国を破壊しつくしてやるわよ!


「きりちゃん、アリに何の恨みがあるの?!」

「何もないわよ。そうね、あえて言うなら純粋な破壊心?」

「僕らの心にはそんな残酷なものはないと信じたいよ!」

「馬鹿ね、子どもほど残酷なもんはないわ。無邪気と見せかけて、その心は小さな悪意でいっぱいなのよ」

「きりちゃん!僕ら知らず知らずのうちに犯罪者にでもなってるの?!」

「よく考えてみなさいよ。この間も面白がってトンボの羽をむしりとったじゃない?でもあたしたちはただトンボに羽がなかったらどうなるんだろうって、ちょっと不思議に思っただけじゃない。そのときあたしたちはトンボをいじめてやろうとか、殺してやろうなんて思ってなかったでしょ」


建築ぼうや、目にいっぱい涙ためてるじゃない。でもちゃんと言わなきゃね、今後のためにも。


「でもトンボにはそんなの関係ないわけじゃない?突然つかまえられて、突然大切な体の一部を奪われる。でもトンボはしゃべったりしない、だからあたしたちも絶対にやめたりしなかった。そしてまぬけな格好にされて、飽きたらポイよ。その後のトンボの生活なんて考えずに。その一瞬の興味のために多くの命を無駄になくしてる。これがあたしたち、子どもなのよ」

「な、ならどうして、アリの巣に、ひ、ひどいことするの?」


もう号泣ね、まるであたしがいじめてるみたいじゃない。


「決まってるでしょ、子どもだから」

「え?」

「子どもだから許されてるのよ。大人になってまでアリの巣に枝突っ込んで遊んでたりしたら、警察どころかそれこそ病院行きね」

「で、でも、かわいそう、だよ」

「そうね、でもそうやって命の大切さを学んでいくのよ。どんなに小さな生き物にもあたしたちと同じ命があるの。だからむやみに殺しちゃだめなのよ」

「う、うん!!」


これでまたひとつ大人になったわね、建築ぼうや。


「でもきりちゃん、そこまでわかってるのにどうしてアリを執拗にいじめるの?」

「楽しいから」


子供のうちはね、いろいろ経験が必要なの。物より思い出よ。


「きりちゃーん、お風呂に入るよ〜」

「はーい」


そう、いろいろやってみなくちゃね。


「きひぃぃぃ?!き、きりちゃん何してるの?!」

「これ何かなーと思って」


兄貴にあって、あたしにないもの。しっかり調べてみる必要があるわね。幼稚園児も勉強することがいっぱいだわ。



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