表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/24

幼稚園児の戦い

今私は最大の危機を迎えている。そう、私はフランスぼうやに食事に誘われて玄関を出ること3歩目。あたしは動けなくなっている。


原因はわかっている。目の前の敵、真っ黒で細長い体、ギラギラした目、今にも肉を食いちぎらんとせん牙、ぴんと立ち周囲の物音ひとつ逃すことのない耳、何よりもそのおしりで怪しく動く尻尾!


「にゃー」


猫!!


「な、何しようっていうのよ。一歩でも動いてごらん、二度と太陽なんて拝ませないわよ!」


事件は1年前、ある夏の日。あたしは兄貴とのプール帰り。ちょっとはしゃぎすぎて歩くのも必死だったわ。油断していたと言えばそうなんだけど。でも!卑怯じゃない!お互いフェアじゃなくちゃ!戦いとは神聖なるもの!それをいとも簡単にやつは!


「今度は・・・今度こそは前みたいに簡単に横切らせたりしないわよ!」


このあたしを横切った!横切りやがったのよ!許せない、許せないんだから!


それからというもの、あたしには不幸が降りかかりっぱなし。兄貴は変態に磨きをかけ、身長はそこそこで体重は増え続ける!最近なんて目じりのあたりがやばいのよ!


「ふっ・・・どっからでもかかってきなさいよ!この1年間、血の滲むような特訓の成果!あんたに見せてあげるわよ!ほら、どうしたのよ!今さら怖気づいたなんて言わせないんだから!」


もちろん特訓は反復横飛び。毎日20分はやってたのよ。おかげで誰よりも横移動が速くなったわ。そこだけは感謝してあげる!


「ほら、かかってきなさいよおおお!!」


積年の恨み、今ここで晴らしてやるわ!


「あ、きりちゃーんどうしたの?あ〜猫か、はいはい今どけたげるー」


・・・え?


「どっか行くの?早く帰ってこないとお兄ちゃん捜索届出しちゃうから!」


ちょ、ちょっと?


「んじゃ猫ちゃんはお家にお帰り、きりちゃんも1分1秒でも早く帰ってきてね。気をつけていってらっしゃーい」


むなしく響くドアの閉まる音。静かに立ち去る我が宿敵。戦いは終わったのだ。今まさに、あたしとあいつの仁義なき戦いは第三者の介入によって、しかも変態シスコンによって終結したのだ。


「・・・人生って・・・何・・・?」


あたしは今日、本当の敵は兄貴なんだと確認した。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ