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番外編 お兄ちゃんの秘密

みんな元気かなっ?!

お兄ちゃんはきりちゃんと毎日一つ屋根の下だと思うだけで生きてる喜びを感じてるよ!



「加藤さん、この書類今日中によろしくお願いします」

「わかりました」

「あ、山本さん、今日の接待は私も行くことになったので」

「主任が一緒だと心強いです!」

「ははっ、邪魔にならないようおとなしくしておくよ」



毎日5時きっかりに仕事を終わらせる。なんてったってきりちゃんが!愛しのきりちゃんが!!「きり寂しかったのーお兄ちゃん抱っこしてーちゅーしてー」なんて待ってるに違いないから!言われたことはないけど!!



「主任、この後お食事にでも」

「ごめんね、妹を迎えに行かないといけないんだ」

「それは残念です・・・」

「代わりに今度お昼ごちそうするから、それで許して」

「そ、そんな!お昼ご一緒させていただけるだけでうれしいです!ありがとうございます!」

「別に俺ごときに緊張しなくていいよ。じゃあ後よろしくお願いします」

「はい、お疲れ様でした!」



5時に仕事を終わらせるといっても、3秒前にはすでに準備は整っている。たとえ仕事が残っていても、優秀な部下たちが我先にと言わんばかりに手伝ってくれる。これはきっと俺の類まれなる能力と人望だな、うん。



「はあ〜・・・主任・・・かっこいい」

「あなたも主任に惚れたのー?」

「あなたもって・・・もしかしてここの部署の女性ってほとんど主任に惚れてんですか?!」

「この部署っていうかこの会社ごとあの主任にメロメロなのよね〜あ、メロメロって死語かしら?」

「この会社ごと・・・」

「ね、メロメロって死語かしらね?」



きりちゃんの通う幼稚園の保育時間はなんと9時から5時までというハイパーロング。土下座する覚悟で頼みに行ったら二つ返事でOKをもらった。

まさしく俺ときりちゃんの愛が勝った瞬間だ!


もう会社帰り兼お迎えはうっきうきのるんるん以外の何物でもない。きりちゃんに8時間ぶりに会えると思っただけでよだれものだ。血が滾る!!



「きりちゃん〜最近お兄さんに彼女できたんだってねー?」

「ぶたの小牧先生・・・そうですね、はっきり言って嫁同然ですが」

「ぶ・た・ぐ・み・の、小牧先生ね〜・・・って!嫁?!」

「はい、その弟はとんでもない外道ですが・・・」

「外道って〜げ・ぼ・く、がいいなー」

「で、でたあ!!」

「きりちゃん?!誰なの?!誰がお兄さんの嫁なの?!」

「きりちゃーん!逃げないでー!どうせなら追いかけてほしいー!ていうか踏んでー!」

「変態なんて兄貴だけで十分よおおお!!!」



ああ・・・きりちゃんの泣き顔だけでお兄ちゃんはも・だ・え・る・よ!



「便乗してんじゃないわよ!!帰るわよ!まったく・・・お兄ちゃんが変態菌撒き散らすから!!」

「お兄ちゃんもはや病原菌扱い?!」

「加熱処理してあげてもいいわよ」

「おいどんまだ生きたいでごわす!」

「なんのまね?つまらない人間がつまらないことしてんじゃないわよ!」

「つ、つまらない人間・・・」

「いいな〜お兄さん・・・罵られて」

「きひぃぃぃ?!まだいる!ついてきてる!ストーカー!」

「そっか・・・そうだよね!そこに愛があるから!」

「そうそう、俺なんて最近踏まれてもないし蹴られてもないし・・・体が熱いです」

「変態変態変態変態!!!!!!!!!!」



そう、きりちゃんの激しい言葉の裏には愛がいっぱいにこもっている。どんなに頭がよくてかわいくて気品があって(以下省略)も、まだたったの5歳。甘えたい時期に俺はあまりかまってあげられない。本当は寂しがりやで泣き虫なはずなのに、いつも気を張っている。

まあ俺が頼りないってのも一理あるけど。


そんないい子は俺の幸せを祈ってくれている。ちょっと見当違いなところもあるけど、それさえもうれしくてたまらない。

もう一生一緒にいたい。お嫁さんなんてもってのほか。なんでわざわざ他人にやらないといけないのか?ここまで大切に育ててきたのも、これから育てていくのもこの俺だ。絶対にお嫁さんになんてやらない!!!

でも・・・



「ドレス姿は見たいよ!」

「は?もう溶けちゃえ溶けちゃえ〜脳みそ溶けちゃえ〜!状態にでもなった?」

「さすがきりちゃん5歳児なのにパチンコネタ!博識だね!」

「もう寝るね、付き合いきれない」

「んじゃ添い寝でも」

「変態」

「お、お兄ちゃんなんだからちょっとはいいでしょー!!お兄ちゃんだってきりちゃんとの空白の時間を埋めたいー!!!」

「大げさね、誰か記憶喪失にでもなったの?でもまあ今日ぐらいは・・・」

「よっしゃああああああああああ!!!!!!!!!!」

「まだ言ってないのに何先走ってんのよ!!」

「でもいいんでしょ?!いいんでしょ?!?!」

「まあ・・・一回ぐらいは・・・」

「お許しげっちゅー!今回はまだ意識ありオプション付きー!!!」

「今回?!オプション?!」

「さあさあ、お兄ちゃんと夢の世界に行きましょうねー!」

「なんか・・・釈然としないわ・・・」

「ほらほらーさあさあー!」



きりちゃんのうとうとしてるときの!あの!表情!!!

たまらん!!!!!!!!

まあいつでもかわいいけどね、うん。一日中カメラ回しときたいぐらいだよ。



「きりちゃんなんか歌ってあげようか〜」

「いいわよ・・・黙って横にいなさいよ・・・」

「今日は甘えんぼだな〜かわいっ!」

「黙れ」

「はい・・・」



もう今にも大きくてつぶらな瞳が閉じてしまいそうだ。

ああ・・・本当に俺は幸せだ。こんなにもかわいい妹をもてて・・・幸せだ。


両親が死んで二人っきりになったとき、自信はもちろんあったが不安もあった。本当にきりは満足か?ストレスや悲しみはないか?俺だけで笑ってくれるだろうか?

完璧にすべてを拭い去ることはできなくても、少しでも暖かい家族になれたら。



「お兄ちゃん・・・」

「ん?」

「今日家族の絵を書いたの・・・」

「そりゃきっと傑作ができたね、賞状もんだ」

「あたしと・・・お兄ちゃんと・・・母さん父さん・・・それにおばあちゃんおじいちゃん・・・みんな大好きな家族・・・書いたよ・・・」

「そうだね、みんな大好きな家族だね」



滅多に触らせてはもらえない、小さくて丸い頭を優しくなでた。まだまだ小さい、かわいい女の子。



「お兄ちゃん・・・うれしい・・・こんなに家族いっぱい・・・幸せ・・・大好き・・・」



傲慢かもしれない。それでも。



「きり・・・大好きだよ・・・」



小さな女の子はこんなにも笑ってくれてる。俺に、幸せを与えてくれる。


その小さな体に、いったいどれだけの苦しみが詰まっていることだろう。俺にはわからない。でもそんな小さな体は、いつだって俺を支えてくれている。どうやっても敵うはずもない。

だから守るよ。いや、そんなことのけても。俺を嫌いになったって。好かれるにこしたことはないけど・・・っていうか嫌われるなんて考えたくない!


まあ守っていくとかいいながら、守られているのは俺だけど。



「おやすみ・・・明日も元気で楽しく過ごせますように」



俺だけの内緒のデコチューおまじない。

ばれたらとんでもないことになりそうだけど、絶対これだけはやめない!だってこれできりちゃん欠乏症を抑えてるって言っても過言じゃない!これをやめろと言われたら俺は死ぬ!!



「さてと・・・かーさーん、とーさーん、きりちゃん眠ったよー。かわいすぎてマジで歯止めきかねー」

「やめなさいって、あんたが言ったら冗談に聞こえないわよ」

「でも分かるよーきりちゃんって世界遺産レベルだもんねー」

「だよなー、父さんとはそこのみ分かり合えるよ」

「そこのみ?!そこのみなの?!」

「はいはい、今日もお疲れ様。しっかり守ってますからね」

「ありがと、母さん」

「俺も全身全霊できりを守ってるぜ!」

「うん・・・まあ・・・そうだね・・・確かに全身全霊だね・・・」

「なぜそんなに困った顔をする?!父は悲しいぞおー!!!」

「まあまあ、あなたがつまらない冗談を言うからですよ」

「つまらない・・・冗談・・・。っていうかきりはいつになったら俺たちのこと見てくれるんだ?!」

「きりちゃんは基本的に幽霊などの類が苦手だから・・・無理かな?」

「無理・・・」

「しょうがないですよ、あの子ああ見えて結構乙女ですから」

「乙女とか言うな!ぴったりなんだよ!!」

「母さん・・・俺も寝るよ。なんかせっかくきりちゃんの寝顔で癒されたのに台無しで疲れたから・・・」

「お前もきりというバリケードがなかったら酷いな!」

「おやすみ、智史」

「おやすみ、母さん」

「ナチュラルスルーかよ!」

「だって無駄に長いし・・・」

「へーへー、どうせ俺はきりが心配で思わず守護霊なんかになっちゃった親ばかですよーだ」

「あなたここまできてすねないで・・・疲れるから」

「お、お前まで・・・!いいもん!俺きりをずっとずっと見守るもん!!」

「じゃ解散ということで・・・」

「じゃーな!智史!」

「おやすみ、父さん」



きりには見えないが俺は両親が死んだ日から見えていた。

なんとなくきりちゃんに話してみたら「何言ってんの?阿呆なの?お兄ちゃんは阿呆なの?」とあほを阿呆と表現してしまうほど怖がっていたため、今ではきりちゃんが寝静まったときにだけ会話している。

死んだにもかかわらずテンションが高い父親の対処はかなり疲れるが、どこかほっとしている。


俺たちは一人じゃない。誰かと必ずどこかでつながっている。たとえそれが、本人にはわからなくても。

でもいいんだ、その分しっかり俺が愛情を注いでいるからね!そりゃもう変態って連呼されるぐらいに!!!


さて、明日もしっかり働きますか!


お兄ちゃんもやるときゃやりますよ!!



ここにきてやっとお兄ちゃんの名前が出てきましたねー。

ついでに「さとし」って読みます・・・どうですかね。なんかこの兄貴、さ行の名前っぽくないですか・・・?!

っていうかこの変態に唯一さわやかさを求められるのはここしかないと思います。


ということで番外編でした。すっごく楽しかったです。みなさんにも楽しんでいただければ光栄です!!

それでは今後ともどうぞよろしくお願いします。ありがとうございました!

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