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幼稚園児の遠足

「みんなー今日は履き慣れた靴でバスに乗ったかなー?おやつも250円までだったよねー約束はちゃんと守れたかなー?」



そう、今日は何を隠そう遠足の日。日ごろの行いがいいのか、雲ひとつない晴天に恵まれあたしたちは意気揚揚とバスに乗り込んだ。


そしてとたんに小競り合いは始まるの。



「どけよ、きりちゃんの横は僕なんだよ」

「そんなこと誰が決めたんだよ、お前は首相か?大統領か?」

「はっ!お前も所詮は子どもだな!大統領だったらなんでも言うこと聞くのかよ」

「屁理屈言うな、もののたとえってのがわかんないの?」

「お前のたとえってそんなもんなんだ?どうせならチェジウとか言ってみろよ」

「何?非国民にでもなったの?チェジウとか外国の血入れてんじゃないよ」

「これだから現代鎖国略して引きこもりは。いまどき流行らないよ?それとも何?独自の文化でも広げたいの?」

「むしろきりちゃんと一生愛の巣で引きこもりたいぐらいだよ」

「だよね、気があうね」

「やっぱ持つべきものは友達だよ」

「うん、でもライバルだから。負けないよ」

「僕こそ」



・・・なんだろう、くだらないけどこの疎外感。

どうしよう、つっこみ・・・めんどくさいから要点だけまとめようかしら。



「きりちゃんどうしたの?疲れてるよ?」

「いくらかったるいからってはじめからやる気がなきゃ楽しいものも楽しくならないよ?」

「あ、おやつは僕のいかそーめんをあげるよ。まー10割いかそーめんだけどね」

「全いかかよ!面白い!全いか!」

「やめてよ、照れる」



・・・なんだろう、沸き立つこの怒り。

きり、落ち着くのよ。ただ怒鳴ったってこいつらには理解する場所がないの。

冷静に、あくまで冷静にいくのよ。



「二人とも」

「何?」

「どうしたの?」

「心して聞きなさい」



静かに・・・優しく・・・


なんて


無理。



「人が黙って聞いてればさっきから何?何がしたいのあんたたちは?大統領?チェジウ?首相はどこにいったのよ!あんたたちは曲がりなりにも日本国民でしょうが!ここはね、日本にはね、大統領はいないのよ。もっと太郎を応援しなさいよ!太郎だって必死なんだから!漢字読めなくったって首相なんだから!総理大臣なんだから!それにもうひとつ。あたしはいかそーめんが大嫌いなのよ!聞いてるだけで窓から投げ捨ててやりたくなるわね!さぞかしバス内の空気が薄汚れているでしょうよ!」



せいぜいおびえてるがいいわ。あたしの周辺で無意味でまるで内容がない争いは不愉快極まりないわ。しかも最終的に戦友みたいな関係になってんじゃないわよ。


ていうかおやつの全いかって何よ。面白いとでも思ってんのかしら?残念だけど、売れない芸人の一発芸以下ってところね!



「・・・え〜みんな?どうしたのかな?おなか痛いのかな?顔が真っ青だよ?」

「先生も・・・エチケット袋満タンだよ・・・」

「先生は悟りの境地に入ったから平気です」

「さすが・・・伊達に30年生きてないね」

「やすくん、帰りは徒歩決定」

「あれがうわさの職権乱用・・・」



うなだれているのはやすくんだけじゃない・・・けど誰のせいかしらね。まったく、KYもいいところね!



それからそこら辺の山に登ってお弁当。お弁当後、景色を見ていると思わせ皆瞑想しているかの如く微動だにしない。そして無言のままおやつタイム。

全員、いかそーめんを頂上から投げ捨てていったわ。フランスぼうや、ひとつだけ隠し持っているのをちゃんと見ていたわよ。

先生、バナナはおやつなのね。


そしてなぜかフランスぼうやが持ってきたトランプでばば抜き。この青空、母なる大地をなめ切っているわ。

最後までジョーカーを持っていたのは帰りが徒歩決定のやすくん。今日はついてなかったわね。大丈夫、幼稚園児も足の短さを除けば持久力はあなたの身内(年寄りに限り)以上はあるはずよ。


そんなこんなで遠足は終了したわ。大きなわだかまりを残して。





「きりちゃん〜今日の遠足どうだったー?」

「・・・」

「きりちゃんー?」

「よく考えたらあたしが大声だしたからよね・・・本当、KY」

「きりちゃん?!急に何言ってるの?!」

「ほっといてよ、それにKYなんて普通でしょ」

「普通?!破廉恥だって!よく考え付いたなって感じだよ!」

「・・・お兄ちゃん、KYが何かわかってるの?」

「狂おしいほど揺らめいて?」

「・・・」

「無言?!無言って結構痛いんだよ!罵倒してくれたほうがお兄ちゃんもうれ・・・待って!待ってきりちゃんんんんん!!!」



幼稚園児も休息と反省が必要ね。



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