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幼稚園児の続・運動会

「さああ始まりました!!次は最終種目!!クラス別対抗リレーだーー!!みんな張り切って走ってちょうだい!先生に、保護者に、この空間に感動と勇気と青春を与えてくれることを切に願い、精一杯応援しながらちょっと賭け事するからー!!」



そこかい、一体誰にいくら賭けてんのよ。



「たかちゃーん!!絶対1位になってねー!先生信じてるー!!」

「まさとくーーん!1位になったら遊園地連れてってあげるわよー!!」

「何も考えずに走れー!無心だー!!そしてたらきっと神様はよっちゃんの味方だー!!」



ああ・・・大人って。



「きりちゃーーーーーーーーん!!惑わされるなー!!お兄ちゃんはきりちゃんにちゃんと賭けてるからーー!!」

「便乗してんじゃないわよ!さばくわよ!家に帰ったら解体ショーよ!!」

「ちょ、ちょっとだけいいかもー!!」

「だああああ!帰れー!!」



もじもじしながら頬を赤らめる兄貴。兄貴、さすがにあたし本気で引いたわよ。



「よっしゃああー!ではレース・・・じゃなくて競技を始めたいと思いますー!!まずは選手入場ー!!」



レースって言っちゃってるわ、あの人。あたしたちが馬にでも見えるのかしら。こんな大人たちに管理されてるあたしたちってこのままの生活でいいのかしら?正常な精神と肉体を得ることはできるの?そもそもここにいる人間の中にあたし以外でまともなのはいるのかしら?ああ・・・だから内閣はごたごたで保険会社の株価は暴落するのよ。



「さくら組、清水孝也くーん!彼のご両親はともに元アスリート!一番の期待の星だー!!」



誇らしげに入場するけど、両親がであってあんたにその遺伝子が受け継がれてるのは誰にもわかりゃしないわよ。でもよかったわね、一番の期待の星だって。今後そんな期待を背負うことがないかもしれないから今のうちに堪能しときなさい。



「もも組、内藤正人くーん!彼は幼稚園児にしてフラワーアレンジメントの資格を持っているつわものだー!ちなみに先生も賭けてるからしっかり走ってーー!むしろ勝ってくれないと先生路頭に迷うわー!!」



花を愛でるのはとても優雅で気品溢れるわね。でも幼稚園児で・・・資格・・・とれるのかしら・・・っと、ここは突っ込んでもしょうがないわね。至極無駄な行為よ。検索なんてしても無意味ね。この世界の神はとっくに狂っているんだから!だから先生、路頭に迷う前にお金は返してもらいなさい。足を洗って真っ当な人生を送って。



「うめ組、高野与四朗くーん!彼の特技は将棋!オセロでは彼に敵う者はいない程の頭脳の持ち主だー!!果たしてその頭脳をどう使うのが見所だー!!」



先生、リレーは確かに少なからず戦略がいるわ。でもね、とりあえずは運動能力で選手選びなさい。将棋もオセロも野外で開催できても、基本的には激しい運動は皆無!むしろ禁止!!



「そして唯一の女の子、たけのこ組きりちゃーーーん!フルネームはお兄さんたっての希望で伏せとくわよー!」



そう簡単にあたしの偉大なる名前を叫ばれてたまりますか・・・って、あたしも馬だったのね・・・ああ・・・忘れてたわ・・・本当・・・むなしい。



「きりちゃーん!心配しなくていいからー!いざとなったらお兄ちゃんが担いであげるからねー!」



もはや競技ですらないわよ。保護者参加の騎馬戦および玉転がしは終了済みよ。



「ここでお知らせよー!残りの子には10円単位でしか賭けられなかったから本日はこの4人で戦ってもらいますー!残念だけどみんなの勇姿は先生の偽りの記憶として後生大事に守っていくわー!!」



もう、リレーですら、ないのね、先生。






結果的には、あたしが勝ったわ。あえて詳細を語らないのは意味があるのよ、深く考えないで。ただ要点をまとめると、スタート直後に高野転倒により負傷、離脱。清水は第一コーナーでまさかの足がつるというハプニングに見舞われ離脱。あたしが内藤に遅れ始めるとどこからともなく兄貴が現れ、強引に抱え込み逆転ゴール。


先生・・・あたし、お金の貸し借りはしない主義なの。残念だけど、どうにかこの苦難を乗り越えてもう一度心からの笑顔を見せてね。



「これで・・・私主催、だれが1位だ金持ちだ大会は・・・終了します・・・と、同時に運動会閉会式も行いたいと思います。みなさん・・・背後に気をつけながら持ち場に戻ってください」



どんよりとした空気の中に混ざる勝利の声は案外多くて、あたしの人気が知れたわね。でも・・・賭けの対象ってのが気に障るわ。あとで兄貴に全部回収させてなかったことにしなくちゃ。


閉会式もすんで、兄貴と帰る道。兄貴はうっきうきで・・・気味が悪い。



「いやー、さすがきりちゃんだね!お兄ちゃん鼻が高いよ!ピノキオなんて目じゃない!」

「そりゃそうね、あれは嘘をつくと伸びるはずだから。お兄ちゃんにはもってこいの鼻ね」

「コンプレックスとして扱わないで!!お兄ちゃん純粋に喜んでるだけだよー!!」

「純粋?とんだお笑い話ね。お兄ちゃんが純粋っていうんならあたし家を出るから」

「違いますー!ちょっとした冗談ですー!お兄ちゃん賭けとか大っ嫌いだからー!勇敢な戦士に無駄に手を出したのも大恥だってわかってるからー!!」

「わかってるならいいわ、後の処理はよろしく」

「はい!命に代えても!!」



将来はもっと健全な運動会に参加したいものね。



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