大きな大きな常勝くん
ガツン…
ガツン…
朝日も昇らぬ、午前五時に響く無骨な音。その無骨な音は人々の眠りを覚ますには十分だった。
「クソジジイ!近所迷惑だその煩い音を止めないか!」
お隣のトメさんが、家のジジイに怒鳴り散らかしお玉を投げつけた。
「フン…あまいわクソババア、それにあれは常勝が鋼を鍛える音じゃそう簡単には止められん。」
俺、小鳥遊 常勝の横で、鎚の合いの手を勤める忠勝は集中しきった俺の合いの手をしながら、お隣のトメさんと口喧嘩をしている。
カン…
カン…
カン…
「つね坊…中々良い音響かせてるじゃないの」
タンクトップにデニムの短パンという出で立ちで火事場の引き戸を開けたのは近所に住む梶岡 茜さん、この春大学を卒業し鷺ノ宮学園の教師になったばかりの新米だ。
「こら茜そんな格好でうろつくんじゃないよ。」
トメさんは茜さんの頭にカーディガンを投げてよこし、再び俺の鍛冶仕事を見学しだした。
出来た鋼を水に浸け再び熱し鍛え冷ましそれを幾度も繰り返しそうして出来た一振りの刀長さは一尺半(45㎝)の脇差と呼ばれる刀だ。
「うむ…乱刃がよく出ておる、あとは研ぎが上手くできれば合格じゃな」
俺は片付けをしながら早く研ぎたい衝動にかられたが、もうすぐ朝食の時間だ刀を鍛えた後だからものすごく腹がへっているのだ。