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098.シフォンヌの家

 シフォンヌの家は昨夜行った古物店の隣にあった。その家は後に魔道士として大成功した人たちと比べ大変質素なものだった。家は平屋で古い石造りで部屋も台所と寝室と居間のみっつしかなく、トイレは古物店と供用だった。


 四人が居間に入っただけでぎゅうぎゅうつめなので、シフォンヌは台所に椅子を置いて座った。居間のテーブルにはささやかな朝食が置かれていた。


 「すまんな、ご馳走するとはいったけど、あまり良いものを用意できなくって。いつも老人の一人暮らしだろ? 子供たちは世話をしてやると言ってくれるけど、どの子の家に行くかで揉めるし、身体が動くうちはここにいたいから」

 シフォンヌは台所から料理を運びながら言った。


 「おばさんの子供さんも魔道士ですか?」

 タクヤは言ったが、シフォンヌは少し笑いながら言った。


 「いやあ、うちの子は魔道士という職業が嫌いなのさ。いつもあっちこっちに行ってから育児を放り出していたから仕方ないさ。まあ、素質もなかったから誰も跡を継がなくてよかったよ、本当に」


そういいながらシフォンヌは台所にある鍋を片付けていた。この世界の生活水準はよくわからないけど、どうも二十世紀末の日本よりも幾分前ぐらいのようだった。電気やガス水道といったものは存在するようだけど、交通と通信はあまり発達していないというか、意図的に退化したかのようだった。


 「シフォンヌおばさん。ゆうべはわたしに素敵なものをゆずっていただきありがとうございます」

 アサミはそういってお礼を述べたが、気のせいか尻尾のリボンも反応したようだった。


 「それはいいよ。近いうちに必要となる人の元に贈れてよかったということさ。だから遠慮なしに使って良いんだよ」

 シフォンヌはそういってアサミの尻尾のリボンをさわっていた。

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