094.シフォンヌはすごかった
一行の後ろの方に歩くネコ耳老婆ことシフォンヌがそんなにすごい女魔道士と聞いてアサミは意外だった。彼女は腰が曲がり歩くのもやっとの状態にみえたからだ。いくら、生まれた時から老人はいないといっても若いときは想像しずらかった。
「いまのシフォンヌは老いてしまったけど、若いときは本当にやり手だったんだよ。報酬だって小国を幾つか買える位もらっていたのよ。まあ、その報酬の大半を恵まれない人々に分け与えたから残っていないけどね。
彼女の最大の能力が潜入捜査と後方工作の巧さだったんだ。それで様々な人々の危機を救ってきたんさ。でも、最後のミッションで相打ちになって瀕死の重傷を負って引退したのさ」
キュリットロスはアサミの心にそう語ってきた。そのときアサミは気になっていた。それほどすごい魔道士だったというのに、なぜ瀕死の状態に陥ってしまったんだろうかと。
「キュリットロスさん。シフォンヌおばさんの最後のミッションに参加していなかったのですか?」
「実はねえ、わたしは無力化されてしまったんだよ。相手の術中に嵌ってね。だからわたしも彼女と同じように酷い損傷を受けてしまってね。自己再生能力をもってしても前の状態に戻るまでには十年もかかってしまったわ。
それでシフォンヌとまた相棒になりたかったのだけど、あのように身体を動かすのもやっとの状態なので諦めたのよ」
「それじゃあ、さっきシフォンヌおばさんが言っていたように、なんで新しい相棒を選ばなかったのですか?」
「シフォンヌにも何人か候補の女魔道士を紹介してもらったよ。いまのあなたよりも遥かに能力を持った娘もいたのさ。でも、何故か波長があわなかったのよ。もしかすると、あなたが今日此処に来るから待っていてという事だったかもね」
「そんなにわたし、能力はありませんよ。まだ一度も魔道士の仕事をしていませんし・・・」
「それは大丈夫よ。誰だって最初は何も出来ないんだから。それに潜在能力がなければあなたを相棒にしようとは思わないさ」
キュリットロスに励まされたが、アサミは何かが起こる前触れだから自分が選ばれたのではないかと思っていた。




