086.アサミのアーマースーツ(5)シフォンヌは素敵だった
「何を言われるのですか、それって幽霊ですか?」タクヤは少し引き気味だった。
「ここに転がっている金属が溶けた塊をみていると、なんとなく聞こえてくるような気がするものでして。もしかすると、ここで一瞬にして命を奪われた者達の魂の叫びのようなのかなと。
まあ、幽霊かどうかは確かめようはありませんが、恐ろしいといつも思うところですここは。もっとも、ここはいままでも掘り出し物があったりしたんですが、今日はやっぱりシフォンヌさんの赤龍帝から下賜された衣装を譲ってくれるというのが素晴らしいです。きっとアサミさんに似合うはずです!」
「ところでおじさん。その衣装ってどんなものなんです? あのオバチャンの若いときに着ていたのが想像できないんだけど」
タクヤが尋ねるとヴァリラディスは持っていた手帳から一枚の絵を取り出した。そこにはアニメかゲームかのようなコスプレをしているかのように見える人物が描写されていた。
「これはな、シフォンヌさんが魔道士として活躍していた若いときの姿じゃ。けっこういいだろう? あっ、でも家内には内緒だからな。結構、ヤキモチを妬いていたから」
「これ、本当にあのおばさんですか? いまじゃ、面影ないですよ」
「しかたないさ。引退を決意したのは、いままでの宿敵に返り討ちにあったからさ。それでダメージをうけたので、生まれ故郷に引っ込んだというわけさ」
「そうですか。それにしてもアサミは衣装に受け入れてもらえるのですか?」
「多分。でもこればっかりはやらないと分からないから」




