082.アサミのアーマースーツ(1)伝説の装備
アサミの想いなど関係なくシフォンヌはある部屋に案内した。その部屋は大きかったが中央に意味ありげな箱が鎮座していた。
「これは赤龍帝がわしにプレゼントしてくれた防御用衣装だ。いま、これと同じ物を作り出せる職人は世界に三人いるかどうかじゃ。それに選ばれた者しか装着できないのだ。しかも適合すればいつどこでも装着できるようになるのさ」
そう彼女がいうとタクヤが口を挟んできた。
「おばちゃん、そういうけどアサミになにか危険な目に会うようになったりしないですよね? それになんですか防御用衣装って?」
「それはなあ、魔道士が着る衣装のことだ。大抵は霊的攻撃である呪詛や武器による物理的攻撃といったものを防ぐものだけど、この防御用衣装は強大な攻撃力も備わっているんじゃよ。
こいつは、わしが赤龍帝が下されたものだけど、この衣装を着こなせれば魔道士十人分の攻撃力を発揮できるのじゃよ」
「それにしても・・・おばさんはそれを何歳まで来ていたのですか?」
「そうじゃなあ・・・最後は四十五歳だったかな? その時、一度引退したためだけど正直なところ若い娘が着用すれば絵になるけど、中年おばさんが着用するとどうも・・・なんていわれたのが原因さ。理由は実物を見ればわかるさ」
そういってシフォンヌはお宝でも出てきそうな箱を触り始めた。後で聞いた話によればその箱の中身を所有している者にしか開けられないという代物だった。だから彼女は生きているうちに継承者に渡したいと願っていたという。
その箱を開けようとしている最中に感激といった表情をしていたのがヴァリラディスだった。彼は興奮気味で言っていた。
「生きているうちに、あの伝説的な装備を再び見れるなんて、なんて幸せなんだろうか?」




