081.宿場町にて(5)シフォンヌばあさん、骨董品なの?
ネコ耳老婆の若い頃はどうだったんだろう? アサミは想像しようとしてみたけど、上手く浮かんでこなかった。もし人間に完全にならなかったらわたしもあんな風になるのかしら? そんな事を思っていた。
「そうそう、わしの名前を言っていなかったな。シフォンヌ・フォヴォ・エガリィーだ。今年で九十九歳だ。これでも八十歳まで魔道士だったんじゃ。
もっとも、最後のあたりは若い子を使って楽していたけどさ。そうそう心配しなくてもいいぞ。そこのネコ耳ちゃんにはわしの若い頃に使っていた道具を一式譲ってあげるさ」
そうシフォンヌばあさんは奥の部屋に案内していたが、その時常連だから来た事が何度もあるはずなのに、置かれている商品に目に集中してしゃべらなかったヴァリラディスが口を挟んできた。
「シフォンヌ姉さん。それって昔、赤龍帝から下賜された防具のことじゃないか? あれって確か骨董価値があるからシンファー金貨1000枚でも買いたいという収集家がいるんじゃないか。そんな高いものわしが貯めている銭だけじゃ足らんぞ!」
「なにいっているんさヴァリさん。わしはそこのネコ耳ちゃんに譲るんじゃよ。まあ、出世払いといったところさ。なんだって、あれはこの世界でも数少ない代物だからさ。それに誰かのコレクションになってしまうよりも、使いこなせるネコ耳娘が持ったらあれだって喜ぶだろうし」
そういってシフォンヌはネコ背をさらに丸くさせながらアサミに語りかけるようにいったが、それって骨董品じゃないかしらと思うアサミであった。




