080.宿場町にて(4)ネコ耳老婆と地下室へ
ネコ耳娘がアサミであれば、目の前にいるのはネコ耳老婆であった。彼女のネコ耳は白い毛でボサボサとしてだらしなく、尻尾の毛もボロボロの箒のように抜けかかったような感じだった。そのようなネコを見たことがあったと思っていたら、永川家で飼っていたデブネコの「アリス」のような雰囲気だった。まあ、アリスもこの世界に転生したわけはなかったが。
「あんたたち、魔道士になるわけなの? まあ他の世界から召喚されたんでしょ。そんなら生きていくには一番良い手段だよそれは。わしも若い頃は魔道士で活躍していたけど、この世界の中を自由に行き来できるし報酬も結構もらえるし。
それなら譲ってやってもいいぞ、わしの魔道士時代の道具をまあ御代はそれなりに頂くけど」
そういってネコ耳老婆は床を叩き始めた。すると床板が跳ね上がり地下室に通じる階段が見えてきた。
「これはなあ、破局戦争以前の遺跡に通じる階段なのさ。この宿場町自体も昔は軍事施設だったようなんだけど、いまは食料の備蓄倉庫ぐらいしか利用価値はないけどさ」
そういわれ中を見ると理由は判った。かつて猛烈な熱でも受けたかのように溶解してしまった痕跡があったからだ。どうも熱線兵器が使われ中にいた人も物も一瞬にして高温に晒され消え去ったらしかった。
「まあ、すべるから気をつけて頂戴。ここは上にあるものよりも貴重なものを陳列しているんじゃよ。本当は常連さんしか入らせないけど、ヴァリさんの連れだから選ばせてあげるさ」




