071.山道にて(1)デラル鷹について
この章では、ガルアの世界設定の雑談が多くなります。
二人が後で知ったことであるが、二人が最初に召喚されたのは約千年前に起きた「破局戦争」の片方の当事国の主要部で、現在でも忌み嫌われた地であったという。しかも大陸が沈下して浅い海が広がる地域で人口希薄地だったということで、わざわざそこに召喚された。
要塞馬車はかつての文明が惑星中に整備した大容量重量物輸送システムの遺跡を辿って移動していた。この世界では各地域がほぼ自給自足できるように自立しているので、地域間の交流が盛んでないので、大規模な交通手段を必要としなくなっていた。
だから、公共交通機関が貧弱なので魔道士派遣ギルドは自前で要塞馬車のような交通手段を所持していた。
「ところでおじさん、この世界には他に交通手段はないのですか?」
アサミはちょっと気になったので質問していた。この要塞馬車は地球の尺度では時速40Kmぐらいで葦原の道を走行していたが、山脈にかかると本当にゆっくりとした速度になっていた。
道もあまり維持管理はしていないようで、山間地に入ると、ところどころ崖が崩れたり、道が崩落したりしていて、道幅が狭くなっているところが数多くあった。中には地盤がしっかりしているためか、民家や商店が建てられているところもあった。
「そうだなあ、この要塞馬車は本当は重武装の魔道士の装備品を運搬したり、ギルドの支部のない諸侯領などに向かった時の臨時支部に使ったりするもんだから、本当に速度遅いなあ。まあ、急ぐならデラル鷹に運んでもらったりするけど」
ヴァリラディスは機械馬の整備をしながら話してくれた。
「なんですか、デラル鷹って?」
「それはなあお嬢さん。40チャート(約12メートル)ある大きな鳥でなあ、そいつの胸にゴンドラを吊ってから、そこに乗っていくんじゃよ。
まあ破局戦争の前からある飛行機械もあるんだけど、妖飛族の襲撃には無力だから、危険地帯を突き抜けるには都合がいいのさ」
そのときアサミは恐ろしい事を思い出していた。そう猛烈な速度で空を「落下」したときの記憶を。そんな事出来ないわと思って少し寒気を感じていた。




