065.外部はボロボロ内部もすごい(7)
永久炉のような技術が機械馬の動力になっているのに、この要塞馬車も機械馬の内部もものすごくボロボロだった。要塞馬車の床板も朽ちかけたような木の板だったけど、機械馬の中もすごいことになっていた。永久炉の排熱を使っているのか、得体のしれない植物の栽培が行われていた。
「ジェムシームさん、この実は一体何ですか? なんかおいしそうですね、甘い香りがしますし」
アサミが鼻を近づけようとしたが、急にジェムシームが大声をだした。
「その実はむやみに顔を近づけてはいけない! その実は魔法使いが誘惑のために使うマガディガスルじゃ! あまり匂いをかぎすぎると昏睡状態になるか淫乱になるぞ!」
「淫乱、ですか・・・なんでそんなのを栽培されているのですか?」
「まあ小遣い稼ぎじゃよ。その実結構高く売れるんだよ。この要塞馬車の維持費で結構経済的に苦しいから、旦那の趣味の古書代金の足しになっているんだ」
「ところでさっきから魔道士という言葉を聞くけど、それって俺たちがならないといけないものなんかよ」タクヤはそうジェムシームに聞いてきた。
「あなたち聞いていないんだね? 御神託があったんだよ、あなたたち二人はこの世界でこれから起きるであろう未曾有の事態に立ち向かうことが出来る存在だと。だから、こうして派遣ギルドはわざわざ迎えにこの要塞馬車を派遣したのだ。
本当ならもっと足の早い快速馬車や天空船もあるんだが、本当にその存在なのかを見極めようというわけだよ。まあわたしが思うには・・・もうちょっと時間がいるんじゃないかな」




