063.外部はボロボロ内部もすごい(5)
タクヤはアサミと一緒に要塞馬車の中を歩き始めた。この要塞馬車の廊下は大変狭く肩がぶつかりそうだった。このような乗り物を見たことあるとタクヤが思ったが、それは潜水艦の内部のようだった。
要塞馬車の中には調理場や食料庫などもあった。二人で調理場を覗いていると中から老女が出てきた。
「あなたたちなの? うちの馬車がこんな辺鄙なところまで向かいに来たのは。そうそう私はこの馬車で旦那と一緒に暮らしているジェムシームというのよ。さっき会ったのが旦那のヴァリラディス・フォートクトスなのよ。もうこの馬車に乗って八十年近くになるわ」
あとで知ったことであるが、この要塞馬車の夫婦みたいにこの世界では長寿が標準的だということだった。でも、このふたりの正確な年齢は教えてもらえなかったけど。二人はジェムシームばあさんに案内してもらった。
「この要塞馬車はねえ、魔道士派遣ギルドに登録されているパーティーと旅するためのものでね、世界各地に移動するのよ。そうそう、この要塞馬車は図体は大きいけど足が遅くてね。だから稼働率が悪くて出動したのは久しぶりよ。
いつもはライディスの城壁近くで止まっていたけど、あななたちの用があったからこんな辺鄙な地の果てにきたわけ。それにしても、あなたたちは一緒に来るのよね」
「するもしないも、これから何がおきるのか判らないのですけど、ジェムシームさんはなにかご存知ですか?」
ジェムシームに案内されて次に通されたのは、馬車と機械馬を連結している場所だった。ここは地上より六メートルの高さだったので、周囲の風景がよく見えた。そこからは、どこまでも続いているようにみえた葦原の先に青い水平線が見えていた。




