058.要塞馬車
巨石の麓で待っていた二人の前に現れたのは巨大な馬車だった。まるで移動要塞みたいな感じだった。それを引くウマも動力源はなにかわからないけど、蒸気のようなものを吹き上げていた。すると馬車の上の窓から声がしたが、何を言っているのか判らなかった。
どうすればいいのか戸惑っていると、要塞から縄はしごが下ろされ、物凄く背が低い老人のような者がおりてきて二人に近づいてきた。このとき彼はクルミのような固そうな木の実を差し出してきた。このときイリスが言っていた事を思い出した。これは知恵の実だと。
その実は硬く美味しいものではなかったけど、食べているうちにだんだんと老人の言っていた言葉の意味が判るようになった。
「あんたたちかね? 御神託でいっていた二人は? 他の世界から召喚されてきたということだけど、いったいどんな世界なんだよ。この世界に居る者とそんなに変わらないが・・・まあ、御神託なんだから仕方ないさ。
申し遅れたが、わしはこの要塞馬車の主人のヴァリラディスだ。そっちの名前を言いなさい。
「俺はタクヤ。そっちのネコ耳の少女はアサミというのだ。ところで俺たちはこれからどうなるのだ?」
「まあまあ、不安なのはわかる。とりあえず馬車の中にお入りなさい。朝食を用意しているから」




