057.別れそして迎え
二人が話していると、イリスが別れの挨拶をするため近寄ってきた。
「お二人さんとここでお別れです。わたしは元いた世界に戻ります。ここでの生を全うしたら、またお会いするかもしれませんが、それではさようなら」
イリスはそういうと霞のように消えていた。そして乗ってきた列車もいつの間にか消えていた。タクヤとアサミは葦原の真っ只中にある巨石のそばで取り残されてしまった。もし、このまま誰も迎えに来てくれなければ、どうやって生きていくのか判らなかった。
「アサミ、伊理さんいやイリスさんからこの世界の事何か聞いていないのか?」
「わたし、少しだけしか教えてもらっていないわよ。でもなんとなくファンタジーな世界のようだけど」
「ファンタジーねえ、魔法でも使えるのか?」
「たしか魔法ではなく超能力みたいなものだといっていたけど・・・」
アサミはこの世界の事をイリスから殆ど教えてもらっていなかった。それにしても迎えに来た人に任せなさいというのも少し無責任のような気がしていた。
陽が高く上り巨石が落とす影が短くなってきた頃、遠くから馬車のようなものが見え始めた。どうもこれが迎えのようだった。これで二人は一安心だったが、近づくにつれ、その馬車が巨大なモノである事に気付いた。
その馬車は地球の尺度で高さ10メートルはあり、引いているウマも金属で出来た機械仕掛けのものだった。いったいそれってなんなんだろうか? ふたりか口をあんぐりとしていた。




