056.前世の縁よりも
「さっき見た夢なんだけど、俺が特攻隊員で婚約者だった女性がいたけど、結核に冒されて婚約が破棄されて・・・原爆で死んで俺も打ち落とされて死んだ・・・そんな内容だったんだ。まあ本当に前世だったのかわからないけど。まあリアルな夢だった」
タクヤは巨岩を見上げながらそういった。巨岩には数多くの鳥が生息しているようで、サエズリが聞こえてきていた。アサミはイリスから聞いた話を思い出していた。アサミとタクヤになる前の前世の話を。
タクヤが見た夢は、その話に酷似していたので、もしかすると本当にタクヤは前世の記憶を垣間見たのかもしれなかった。
「それって前世かもしれないね。でも大事なのはこれからじゃないのかな。私は一度死んでしまったとはっきり覚えている。
だから今は永川亜佐美の人生の続きと言えるかもしれないけど、あの時とは心も身体も違っているけど、タクヤとの日々の続きを一緒に過ごしても良いかしら?」アサミはそういってタクヤに寄り添ってきた。
「俺もそうしたい。でも今までいた世界と違いすぎるじゃないかよ、ここって。だから・・・まあ冒険みたいな事になるんじゃないのかな。それでもいいかな」
アサミはこの世界を選んだとはいえなかった。まさかタクヤとアサミのままで生きていける世界がここしかなかったからだと。でも、それは言わないでおこうと思った。だって、ここまできたらそんな事は関係なかったからだ。




