048.ネコの痕跡
わたしが目覚めた時。タクヤの腕に抱きついていたことに気付き驚いてしまった。ネコの時にはいつもその腕で抱っこされたり、なでてもらったりしていたというのに、こうして自分のほうが抱きついている事が不思議だった。
高校生だったとき、タクヤの手を引っ張ってプリクラを一緒に撮ってもらったことがあったけど、そのようなことは後にも先にもあの時だけだったので、その時以来だった、こうして男の腕を抱きついていたりするのは・・・
そのとき、わたしの指の爪が鋭く尖っているっことに気付いた。それはネコのような爪だった! わたしはネコ耳に尻尾だけでなく手足にもネコの痕跡があったのだ!
「それじゃあ、あんまり強く抱きついたりしたらいけないよね。そんなことをしたらタクヤが怪我してしまう」
私はそとの景色を見ていた。そこは水平線の先まで続く葦原だった。どうもここは大きく浅い湖に面した場所のようだった。とても辺鄙なところのように思った。
この中に他の人はいないのかなと思って見渡すと、イリスさんが変化した伊理さんがいた。彼女は近づいてきてこういってくれた。
「この車両から降り立って迎えの人が来た時から、あなたたちの新しい旅が始ります。長いのか短いのかはわかりませんが、試練のたびになりますわ」
伊理さんはそういってから、タクヤの肩を揺さぶり始めた。




