039.大きなネコとホームレス
この時、私の姿は大きなネコ、タクヤはホームレスの姿だった。しかもタクヤは中年の落ちぶれた姿だった。まあ、その姿でもよかったのだけどわたしが十九歳で彼が四十三歳だったら、親子ほども歳が離れていた。
「イリスさん。彼もそれなりの姿にしてくれますよね」
「ええ、そういたしますわアサミさま。彼の場合は心も身体も病んだ状態ですから、そのままの姿では洗えたな世界にいけないので。彼の場合は若返らせてさしあげます。そうそう新たな世界で必要な能力も与えますわよ。そうあなたにも」
「その能力って?」
「そうですね。地球人類で言えば超能力もしくは第六感といったものでしょうね。詳しいことはおいおい判る事ですから。そうそう時間はありませんよ、アサミ様。タクヤ様が眠っている間に全ての準備をしないといけませんから。
まずはアサミ様、あなたをネコの姿から人間の身体に転換させていただきます。少々苦痛を味合うことになりますが、我慢してください」
それはわたしがネコでいられる時間はなくなったということだった。それにしても不思議な事があった。どうしてタクヤはわたしにアサミと名づけたのだろうか? わたしの魂の記憶が甦られるまでは気にもしていなかったけど。
わたしが(永川亜佐美としての)死の直前に脳裏に浮かんだのはタクヤのことだったけど、転生して懐いた人間がタクヤだったのは間違いないけど、タクヤもネコの私をみてアサミを思い出したのはなぜだろうか?
まあ、そんなことを彼に聞いても本当の答えなど得られないかもしれないけど、もしかすると前世で結ばれなかった赤い糸が偶然結ばれたという事なんだろうということだろう、そう思うことにした。
それにしてもタクヤも不運の連続という人生だったようだ。身体を害し仕事運にも見放され不本意なホームレスになったのだから。タクヤの初老にさしかかったような疲れた顔を見ると、わたしが最初にタクヤと出会ったときの面影が僅かに残っていた。
あの時は年齢差、そして教育実習生と生徒という関係で決して恋が成就することは叶わなかったが、これからは違うはずだと・・・
「ところでイリスさん。向こうの世界に行ったからといって、必ずしもタクヤと結ばれない。なんてことになりませんよね? なんか悲観的なことをいいますけど」
「そうですね、普通に喧嘩が多いカップル。なんてことになるかもしれませんけど、別れたりはしないと思いますよ。まあ、そこんところはあなたたちが愛情を育ててくださいね」
イリスさんは少し困ったような顔をしていたけど、たしかに男女の仲を取り持つことは・・・っていうことはイリスさんは愛のエンジェルではないってことなのかな?




