034.タクヤの送別会
ホームレス達の根城になっているガード下はいつになく大騒ぎだった。タクヤのお別れ会が開かれていたからだ。わたしは、その賑やかさに少し驚いていた。なんだってホームレスの一人、青シャツさんがわたしを食おうといいだしたからだ。
さすがにそんなことにはならなかったが、わたしは、どこかの中華料理屋から持ってきた食べ残しを食べさせてもらった。はやく人間として食事をしたいものだと思いながら美味しくいただいた
「タクヤ、お前二度とここに戻ってくるなよ！ だって、ここを卒業するのだから、鳥が巣立ったらもう生まれた巣には戻らないのと同じだ！」
なんでもタクヤは、この町を出て行くという条件で五千円の交通費を貰ったという事でmもうこの町から出て行かないとならないということだった。
「それにしても、ネコも連れて行くのかよ。ワシが焼いたらうまいなんて冗談をいったからかよ？ 電車に乗せられるのかよ？」
青シャツはそういってタクヤに酒を飲まそうとしたけど、タクヤは酒は飲めないといって断っていた。
「大丈夫です！鉄道会社に聞いたらネコもゲージに入れていれば、手荷物として230円支払ったら乗せれるそうです！ でも本当に俺のために送別会をしてくれてありがとうございます」
わたしも一緒だということを聞いて安心した。すべてはイリスさんのシナリオに沿っていた。
「いいんよ。ここにいる人も世間からホームレスなんていわれているけど、自分の居場所がたまたまここだというだけよ。聞いた話では、ここも来週には市役所の連中が不法占拠として強制退去させるそうだ、ワシらも。だから、これはこうしてみんなと出来る最初で最後の祭りみたいなものだ」
そんなことを誰かがいっていたけど、それにしてもわたしもタクヤもここを出たら別のモノに生まれ変わって召喚されると思うと、楽しみでしかたなかった。
もっともそれは、わたしと伊理さんことイリスさんしか知らない事だったけど。とにかくわたしはそれを知っていても誰にも伝えられることは出来なかった。いま、まだネコの姿だったから！
