033.どこかで生きているというのであれば
夢の中で姉の亜佐美が最後にネコ耳を持つ少女のような姿になったと話したら、なぜか父も婚約者の拓郎さんも同じ夢を見たといっていた。それってなんかの偶然の一致なの?
「きっと亜佐美は奈緒美が幸せになれることを知って、感謝と祝意を伝えに来たという事じゃないのかな? もしかすると神様のはからいじゃないのかな」
父はそういったけど、そうかもしれないと私も思った。
そして、しばらくして私の結婚式の日がやってきた。教会には式への参列者が集まっていたが、そこには姉と母、そして拓郎さんの兄の写真も親族席に置かれていた。もしかすると違う世界では異なる立ち位置で出席していたのかもしれない愛おしい人たちだった。
それにしても姉はいまはどこの世界に旅立ったというのか? それは不思議だった。またアリスもわたし達の結婚式を目の前にして虹の橋を渡っていってしまったが、ふと姉がアリスを譲ってもらった迫崎琢哉のことが気になって、人づてに探してもらったけど、彼は行方不明になっていたのだ。
聞いた話では、西日本のある町でホームレスになっていて、永川亜佐美の墓参りをするといって夜行列車に乗ったきりになったということだった。それを聞いたわたしは、おかしな空想をしていた。
夢の中で姉が言っていた別の世界で生きていくのに付き合って行ったのではないのかなと想像していた。もちろん現実では起き得ないかもしれないし、確かめる術はなかった。
しかし、わたしは永川亜佐美の人生は終わっていても、姉の魂はどこかで身体を得て幸せになっていると信じたかった。だって、あんなに良い姉が非業の死を遂げたのだから、神様だって何らかの形で報いてくれているはずだから。
参列者の賛美歌を聞いてそう思っていたが、賛美歌の中の声に姉のものがあったような感覚があった。もしかするとそれは姉の魂からの贈り物だったかもしれなかった。結婚式も終盤が近づいてきたとき、拓郎さんがそっと耳打ちしてくれた。
「僕の夢の中で、君のお姉さんから君を不幸にしたら化け猫になってコテンパンに打ちのめしに来てやるといわれたよ。その一方で幸せにしたらもっと幸福にしてもらうように神様にお願いしますといっていたよ。それと僕達にずっと神のご加護がありますようにって。君のお姉さんは本当に妹思いの人なのね」
そういって優しい顔をしてくれた。わたしは、この地球に姉はいないとしても、神様が作られたどこかの世界で生きていると信じたかったし、それが現実になっているはずだと感じていた。




