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032.奈緒美の夢(後編)

 「お姉さん折角戻ってきたのにどこに行くというのよ? また天国に戻るというのよ? お父さんだって待っているのだから挨拶ぐらいしていかないといけないじゃないのよ・・・」

 わたしは亜佐美の胸で泣きじゃくっていた。こんなに泣いたのは母さん、そして亜佐美の葬儀以来だった。


 「そんなに泣いたんじゃダメよ奈緒美。あなた拓郎さんと結婚するんでしょ! 彼だって兄を亡くしているのだから辛い経験をしているのでしょ! あなたお母さんになって幸せな家庭を築くのが夢だといっていたじゃないのよ! しっかりしないと! お父さんにはちゃんと挨拶してきたから大丈夫よ」


 「お姉さんは今は天国にいるの? それとも生まれ変わったの?」


 「そうだねえ、なんていったらいいのか私にもわからないわ。でも永川亜佐美には戻れないから、これからただのアサミとして別の世界に行く事になったわ。そこでわたしは幸せになってみせるから」


 「どういう意味なの? それってお姉さんのままでどこかで生きていくということなの?」


 「アサミの記憶を持って別の世界で生きていくので、あなたの事もお父さんのことも忘れないってことよ! もし次に生まれ変わったらまたあなたと姉妹として生まれ変われたらいいよね、その時にまた会いましょう。

 その時は二人仲良く歳をとって生きたいわね。なんだって永川亜佐美が歳を取った姿になることはないから」


 「お姉さん、そういうことはもう二度と会えないということなの?」


 「ううん。会えるわよあなたの心の中に残る亜佐美には。でも目覚めたアサミはこの世界を去らないといけないというわけよ。いいじゃないの、私もあんな風にして命を絶たれるとは思ってもいなかったから、こうして奈緒美に最期の別れが出来て嬉しいよ」


 「最期の別れ? それは寂しいよ! また出て行かなくたっていいのに」


 「ううん、神様に特別にお願いしてきたから行かないといけないわ。でもあなたも父さんも愛しているしずっと遠くから見守っているのに変わりないからね。だから幸せに暮らしていくのよ私のぶんも」


 そういって亜佐美はなぜか着替え始めた。その衣装はドレスのように綺麗などこかの民族衣装だったが、気のせいか耳が獣のように変化したように見えた。


 「それじゃあ行くわね。もし機会があればあなたに会えるかもしれないよ。その時わたしは幸せだよといえるように努力するから。では行ってきます!」

 そういって亜佐美は玄関から出て行ったが、なぜか空に飛んで行ったような気がした。その時、亜佐美は天国でもない遠い世界へ旅立ったような気がした。


 翌朝、起きて夢の事を父と拓郎に話すと、二人とも亜佐美を夢で見たと言っていた。しかも耳が獣のようになっていたという・・・



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