266.青銅人形にされた少女
東の大陸にあるメデョアム公国の湖沼地帯に浮かぶとある島に小さなな館があった。この館の主人は「破局戦争」で失われたはずの忌まわしいテクノロジーを使い自己の歪んだ性的欲求のはけ口に使っていた。
その島に一隻の渡し船が一人の少女を乗せて向かっていた。彼女は貧しい漁師の娘で一人漁村に残っていた時に拉致されたのだ。彼女は両手両足を縛られ猿轡をされていた。彼女は必死に脱出を試みていたが、すべては空しく時間を空費するだけだった。
少女が連れてこられたのは館の地下にある鍾乳洞だった。そこには銅で作られたような容器がいくつもあった。その一つに少女が猿轡されたまま、いれられようとしていた。
しかし何を思ったのか拉致してきた魔導士、いやギルドから剥奪されているので今は闇の魔道士であったが、そいつは少女の猿轡をゆるめてしまった。すると少女は猛抗議し始めた。
しかし彼女の命がけの抗議を一通り聞いた後、そのまま容器の中に突き落としてしまった。中からは少女の断末魔のような絶叫が響いてきたが、それもやがて途絶えてしまった。
それから一昼夜して容器の蓋が開けられたが、そこには少女の姿はなくなっていた。代わりに青銅に覆われた人形が横たわっていた。その人形に闇の魔道士は電線を取り付けて電気ショックを与えると稼働し始めた。そして闇の魔道士はその人形の背中と額に番号を入れ始めた。その番号は「六十四」だった。
その青銅人形は美しかったが、昨晩までは貧しい漁師の娘だった。その青銅人形は彼女の身体を材料にして誕生したものだった。だから彼女の魂はこの青銅人形の中に閉じ込められていた。人形の中では哀れな少女の魂が訴えていた。元の身体に戻してほしいと!
しかし人形には表情を変える術はないし、持ち主にしか運命の選択権はなかった。だから「六十四」は闇の魔道士に主人となる館の主人がいる執務室に連れていかれた。そして、このまま仕えるべしと言われた。拉致されてきた娘の存在はこうして、この世界から消え去ってしまった。
その一連の出来事が起きたのは、アサミとタクヤがこの世界にやってきたころだった。だから二人には関係ないことのようにも思えたが、偶然にも二人と運命が重なることになった。その青銅人形にされた少女と。




