263.波打ち際のふたり
アサミはタクヤとそれから波打ち際で楽しく遊んでいた。これが地球にいた時ならタクヤは体調がわるいので先にお休みモードに入っていたところであったが、いまは二人とも同じような年齢なので楽しんでいた。
それをコテージの中で見ていたメイファンは、夏休みの課題が終わらず遊びに行けない学生のような、恨めしい顔をしていた。いつか、あんな風に遊んでもらえる彼氏が欲しいと。
この島に一行三人が足止めになっていたのは、ギルド本部で情報漏えいが起きているのではないかと思われたからだ。インヴァラ公国と青銅の塔に明らかにギルドに敵対する勢力とみられる者が関与してきたからだ。しかもいずれも大規模な爆発を起こしていた。なぜ一行が向かう先が分かったのか?
一行三人に知らされることはなかったが、一時はアサミとタクヤを人の住まないような地に幽閉せよという意見すら通ろうとしたという。それは、かろうじて筆頭統領によって却下されたが。
夕陽が水平線の向こうに沈もうとしていた時、アサミはタクヤと一緒だった。むかし父に聞いたことを思い出した。男と女が一緒にいる最大の幸福とはなんだと。その質問をしたのは父が堅物であったのに母がどちらかと言えばおおらかだったからだ。そんな二人が一緒にいられそうもないと思ったからだ。
「で、親父さんはなんといったんだ?」タクヤは寄り添うようにいるアサミに聞いていた。するとアサミはネコミミの裏をかきながら言った。
「それは、ただ一緒にいるだけで幸せという事だったの。その時はそんなことはないと思っていたけど本当だったのよ。母さんが亡くなる寸前の事だったの。このまま意識が戻らなくても寝たきりになっていてもいいから、先に逝かないでって泣いたのよ、父さんが! あんなに泣き崩れた父を見たことなかったから」
それからしばらくしてタクヤはアサミにある話をふった。”死の女神”が言っていたタクヤの何回か前の前世の魔道士によって命を奪われたことを。どうもアサミと同じようにタクヤも同じ数だけ生まれ変わっていて、しかも出会っているような気がしていると。しかも一度も結ばれていないと!
「この世界に来る直前だけど、ある夢を見たんだ。それは俺が特攻隊員で婚約者が広島の原爆で亡くなったのを知って特攻で命を落としたんだ。そして、青銅の塔に行く前にも同じような夢を見たんだ。涙が顔中に溢れた少女の首を切り落としたんだ。そしてこういったんだ、どうして他の道を選ばなかったと」
「他の道?」
「詳しいことはわからないけど、夢の中ではその少女が死ななくていい方法があったと。それは彼女を操っている黒幕を滅ぼすというものだと」




