262.南の島で
サルヴェリアスに救助された三人はとりあえず事情聴取を受けることになった。どうしてあの状況から脱出したかであるが、アサミが青銅の塔で何かの声に導かれて行ったところには巨大なグライダーがあった。その座席に乗り込んだ瞬間、噴射装置が作動し空高く打ち上げられたが、その直後に塔は崩壊した。
そしてグライダーは遥か上空に舞い上がったが、アサミが気絶したので代わりにタクヤが操縦していた時に、サルヴェリアスが航行しているのに気付いたという事だった。
サルヴェリアスはメルキュアの捜索をした後で、三人が乗ってきた魔法船を見つけ出して曳航しはじめた。そしてサルヴェリアスに備えられているデラル鷹によって比較的近い所にある南の島に連れていかれた。そこはサンゴ礁に囲まれた小さな島だった。そこで三人は次のギルド本部の指示があるまで待機しろということになった。ただコテージと数軒の民家があるだけの島だった。
「メイファンさん、俺たちはこれからどうなるのですか?」タクヤは海辺のコテージの中でまったりしていた。こんなことはホームレス時代にいくらでもしたことであったけど、同じように先がわからないのも不安で仕方なかった。
「それが、分からないのよ。ただ待っていなさいと。そうそう賃金は支払ってもらえるし宿泊費もいらないそうよ」メイファンは書類の束に格闘していた。前の青銅の塔での出来事についての報告書を作成していた。
「それよりも、タクヤさん。あなたもアサミさんと一緒に外で遊びなさいよ! あんな風に楽しそうにしているのだから。それに室内にいたら勿体ないよ。わたしは仕上げないといけないから仕方ないけど。室内にいてもやる事ないのでしょ」
たしかにタクヤにやることはなかったけど、それはアサミも同じはずだった。しかし彼女といえばなぜかはしゃいでいた。まるでネコが狂ったかのように・・・
「タクヤ、砂浜で泳がない? 気持ちいいわよ! この前の人魚になっていたよりも、やっぱ潮を受けて気持ちいいよ!」
その時のアサミの格好といえば、民家から借りてきたビキニのような民族衣装だった。まあ若い女の子にはお似合いであったが、ネコミミに加え尻尾が目立っていた。
「なんでそんなにはしゃいでいるの? 海に行ったことぐらいあるんじゃないんか?」
「実は・・・わたし海に行ったことなかったのよ。ほら父さんは大学が忙しいし母さんは華道教室が忙しいし。それで妹と一緒に行ったのは市民プールぐらいで海水浴は行ったことないのよ。それでうれしいのよ!」
アサミは生まれて(永川亜佐美も含め)こんな風に泳ぐのは初めてだからうれしかったのだ。まあ金色の人魚を捕まえるために人魚にされてしまった事もあったけど、やっぱこっちの方が良いみたいだった。




