026.グロヴァル・コスモリアン(1)
わたしが死んだのはグロヴァル・コスモリアンによる航空テロだというのは知っていたけど、いったいなにが目的だったのか? それは知らなかった。人間死んで天国に行ったら生前わからなかった真実がわかるという話を聞いたことがあったけど、今の私には天国の記憶がなかった。どうも永川亜佐美の魂の記憶が甦ったのでリセットされたようだった。
「先月、グロヴァル・コスモリアンの指導者だった男が自己批判した上で全ての悪事を懺悔し構成員の洗脳を解いて当局に投降しただろ!
これでテロ戦争も終結したというのに、その復讐といわんばかりいにグロヴァル・コスモリアンの構成員を復讐と称して殺害しているだろ! いくら恨みがあっても、相手が人殺しをしたから人殺しをしてもかまわないということはないはずだ。汝、殺す無かれというわけさ。だから参加しているんだ」
「でも姉さんはどう思っているんだろう? 姉さんはあの飛行機に乗っていたのは間違いないのに見つかっていないから、どこかで生きているかもしれないと信じたかったけど・・・美保子さんは無残な姿だったけど見つかったというのに・・・」
「それは言わないでほしい奈緒美! 井之頭くんはわしのゼミ生だったんだぞ。あの人は卒業式の後の謝恩会をするんだといって張り切っていたのに・・・今でも思うんだよ。あの日亜佐美の誕生日だったから出発は後日にしてくれって言えばよかったのにと。彼女の両親もワシも慙愧の念に耐え切れなかった・・・でも全ては通り過ぎた事だ・・・そうだ、お前も同じ思いをしたんだよな。しかも婚約者まで同じようにグロヴァル・コスモリアンに奪われたんだし」
「父さん! いいよもうそれは。ここで悔やんだって姉さんもあの人も戻ってくることはないのだから!」
わたしは父が深く後悔している事を知り悲しかった。本当は泣き出したかったが、ネコの身体では泣き出してもうるさいだけだから我慢していた。
それにしてもグロヴァル・コスモリアンって何者だったんだろう? たしかイリスさんは強制的にそのミームを排除したといったけど、それってなんのことだったんだろうか? もしかすると諸悪の根源の生命体かなにかが指導者に憑依していたというのだろうか。
「それよりも父さん。早くしないと拓郎さんが来るよ。今日は私と結婚の報告をしにくるのだから。彼だって兄をテロで失ったのは一緒なんだし。もうその話題はやめにしましょう」
そういうと奈緒美はキッチンに立ったが、その胸にかけたエプロンは古くなっていたがわたしがいつも使っていたお気に入りのエプロンだった。
「このエプロンをつけるとお姉さんと一緒にいるみたいで気が引き締まるのよ! さあやりましょうねお父さん」




