259.死の女神の残滓
アサミは前世かもしれない目の前の女が、これもタクヤの前世かもしれない魔導士によって命を絶ってもらったという事を言われ、訳が分からくなった。いったい何があったというのよ、その時!
「あなた自分から死を望んだわけなの? いったいどうして」アサミは”死の女神”をにらみつけた。その時彼女はタクヤの顔を愛おしそうに撫でていた。その顔は母のようでもあり恋人のようでもあり、また妻のような雰囲気を漂わせていた。
もしかすると”死の女神”は命を絶った魔道士を今でも愛しているようだった。その面影をタクヤに見ているようだった。
「わたしは・・・この人のいくつか前の魔導士・・・もう名前は思い出せないわ、だって今のわたしの魂は過去にとらわれた死の女神の残滓にすぎないから、忘却の彼方に永遠に向かっているだけなの。罪と罰に苦しみながら。それは地獄に落ちるよりも・・・辛い・・・
それよりも、アサミ。あなたも地獄に落ちているのよね、最期の時を迎える時は必ず非業の目にあってきたのよね、生まれ変わるたびに。あまりにもわたしの罪が深すぎて・・・でも、もう終わりになるはずだったのよ、本当は。
永川亜佐美はそこのタクヤと結ばれるはずだったのに、また輪廻転生の循環を破壊させる行為に巻き込まれ、はたせなかったのよ。この私を操っていた奴に!
なんかの偶然でやり直せる事にはなったのは、ある理由からよ」
死の女神はそう言ってタクヤを抱擁していた手を放し、自分の被っていたティアラを外してアサミに手渡した。
「このティアラはわたしの罪と罰の詰まった残滓よ。もはやわたしの魂はあなたと融合することは永遠にないけど、そばにいて見守っているわ。なぜならわたしから分かれたよっつの魂のうちあなたは二つ持っているから」
「ふたつ? 魂って肉体に一つじゃないの?」
「それなんだけど、あなたはネコとしての魂と人間としての魂の二つが重複した状態なのよ。その重複した姿を反映したのがいまのネコミミ娘ってわけよ。
とりあえず、その状態はあなたが再び魂の国に戻るまで続くだろうけど、問題があるのよ。それは、いまここにない残された魂よ。その魂はきっとあなたの魂を奪いに来るわ。そして三つの魂が一つの肉体に集合した場合・・・この世界はきっと終わるわ」
「世界が終わるだなんて信じられないわ! この世界には大規模な戦争は起きないと聞いているのに。その世界が終わるとはいったい?」
「それは・・・わたしにもわからないわ。でもね、ここにいない魂の存在を感じるのよ。そいつはわたしに永遠に許されない悪事をさせた奴の元にいるのよきっと!」
そういうと”死の女神”の魂はアサミの身体に重なると消えてしまった。アサミは自分がなにか別の存在になるのかと心配したけど、変わらなかった。アサミの手にはティアラを握りしめていた。




