220.人魚の皮?
アサミが目にした人魚像はそれなりに良くできていて今にも動き出しそうな姿をしていたけど、その姿は異様だった。
全身が鱗のようなものに覆われ、顔は魚を平べったくしたような感じで凶悪そうな表情だった。また足はなく大きなヒレになっていて手は鋭い爪が生えていて、その指の間は水掻きみたいな膜があった
。正直な事を言えば人魚よりも”半魚人”といった方がよかったかもしれなかった。でも半魚人は人間と同じように四肢があるのだからやっぱ人魚なのかな・・・
アサミは人魚と聞いてお伽話に出てくる姿を想像した自分がバカだと思った。だってここはガルア、タヌキがいなかったように地球とは異なる生態系を持つ世界。ましてや人魚が実在する世界だから、同じものがあるはずはなかった。でもネコはいるけど・・・
「ちょっとまってくれワニ革おっさん! アサミを人魚にしたらもう二度と戻れないなんてないだろうな? きちんとわかるように説明してくれ!」
タクヤが口火を切ったが、たしかにネコ耳娘を人魚にしないといけない理由は知りたかった。
ワニ革おっさんことサランジャーは腰を上げた。その様子を見たときアサミは幼い時の事を思い出していた。あんなふうな模様をした大きなバックを持っていたセレブな親戚がいたことを。でもやっぱ生身の皮膚なんだろうね。同じようにこれから私がなるという人魚も鱗で覆われて・・・
わざわざ、こんな地の果てにあるようなところにきて気色悪い人魚に何故ならんというのだろうか? 最初からわかっていたらこんなミッション拒否したかったと思った。するとサランジャーは書物をもちだしてきた。
「人魚に変身するって言ってもそのものになるわけじゃないんだよ。皮を被ってもらうんじゃよ作業用に養殖しているのをなあ。まあ、なれなきゃ難しいとこだけど、ところでネコ耳娘、泳げるのか? ネコで泳げるやつと泳げねえがいるからのう?」
アサミはそれを聞いて訳が分からなくなった。皮を被る? 着ぐるみじゃあるまいし、それに養殖ものっていうことは生もの? それに泳げるか泳げないかと言われても・・・たぶん泳げなかったような気がする。水泳は得意じゃなかったし。そんな私に勤まるだろうか?
「たぶん・・・泳げるかなと思います。この部屋の幅位は・・・もう何年前に泳いだのか覚えていませんし。それにしても作業用の養殖ということは生きているのですか、人魚の皮って?」
「まあ泳げるなら大丈夫だ。なれたら。それに皮は生きているんだよ。人間が被れば人魚に変えてくれる生き物だけど、まあ十日間は人魚の姿になってもらわないといけない。その間に金色の人魚が出現してもらえれば都合いいんだけど。
遭遇すれば、あんたの出番というわけだ。なんだってダンジョンをぶっ壊すぐらいの能力あるんだろ?」




