212.ダンジョン危機一髪!
アサミによってダンジョンから地上に抜ける穴が出現したころ、タクヤはサクロスの生皮を被ったウィンギウム・チャガスと戦っていた。タクヤの剣は確実に当たっていたが、哀れなサクロスの亡骸が傷つくだけであった。
「タクヤ! あんたの彼女はやっぱり裏の魔導士側だったようだな。さっきと轟音は我ら首魁様が試すために用意した罠だったんだ。もし、あの結界を破壊できなかったら我らは必要としなかった。だから壊したということは、やっぱり望んだ時代がやってくるんだ!」
「いったい、何を言っているんか? お前みたいに酷い事をしたわけじゃないだろ、アサミは!」
「酷い事? 今さっきしたさ、さっきの轟音は哀れな魂を消滅させたのさ! そんな芸当ができるのはやっぱ裏の魔導士だからさ!」
「いい加減な事をいうな! お前のように人の皮を被った奴のいう事なんぞ、信じねえぞ!」
「それはご自由に! でも真実はもうすぐわかるさ! あの女の魂はなんなんだということを。それを知ったとき今まで通り彼女といられるかな?」
タクヤは力を振り絞りウィンギウム・チャガスを叩きのめそうと攻撃し続けた。そしてサクロスの亡骸がボロボロの布のようになった時、そのハザマからタクヤが見たのは、恐怖心を感じるほどの漆黒の闇だった。ウィンギウム・チャガスの本体は虚無の暗黒だった! サクロスの生皮を脱ぎ捨てたときついに正体を現したが、まるでそれは周囲から光を奪い去っているようにみえるブラックホールのように見えた。
「あんた、結構魔道力があるなあ。こんな坊やの生皮でも俺様が纏っていれば結構持つんだぞ! でも、こうしてボロボロに出来るという事は・・・まあ、役には立つだろうな。そのうち裏の魔導士にスカウトしてやるからさ」
そういってウィンギウム・チャガスはゆっくりと移動し始めた。この牢獄は地熱をエネルギーとして光を放つ放光コケの群生地になっているので、そこそこ明るいが、もし暗闇でこいつに襲われたら直前まで気が付かないのは間違いなさそうだった。自分たちも、そして犠牲になったサクロスも闇から出現したこいつにやられてしまったのだという事だ。
「取りあえず今回はあんたの彼女が我ら首魁様が待ちわびていた破壊の女神が転生してきたものだと分かったから任務完了という事だ。
それに、ここで作っていた消滅爆雷ももっと秘密を守れるところで生産できるようになったから、もう用などないなあ。
そうそう、このダンジョンの排水施設と取水施設だけど、もうすぐ両方とも破壊してやるから水没するからな!
まあ、生きて帰りたかったらあんたの彼女と合流することだな。彼女の能力ならここから脱出できるはずだからな」
そうウィンギウム・チャガスが言った瞬間、ものすごい数の爆音が響いてきた。奴が言う通り、このダンジョンに仕掛けられていた消滅爆雷が同時多発的に作動したようだ。そしてものすごい振動をタクヤとエヴァ・エリを襲った。




