211.黒き結界、そしてアサミの魂・・・
その場にへたり込んだアサミは大粒の涙を流していた。さきほどまで剣を振りかざし超光波の弓で黒い結界を蹴散らした女には見えなかった。
フィルビーは先ほどまで感じていたアサミの魂の影が無くなったことに安心していた。でもそれは元の魂の奥底に戻っていったに違いないとも感じていた。
「アサミ、きみがさっき何をしていたのか覚えているのか? あれはいつものアサミじゃなかったじゃねえかよ」
「ええ覚えているわよ。でもあの時のわたしの人格は変わっていたわ。いつもの私が奥底に沈んで他の誰か・・・といっても、あの人もアサミだったわ。そのもう一人のアサミがわたしの身体を支配していたわ。そしてあんな恐ろしいことを!」
そういうとアサミは両手を顔に当ててうずくまってしまった。もう何も聞けないかもと思ったフィルビーはキュリットロスの方に聞くことにした。
「キュリットロス。あの結界の中で何が起きていたんだ? さっきアサミは結界は哀れな人たちの魂の集合体だったとか言っていたが」
「そうねえ、なんていえばいいかな。あの黒き結界は並みの裏の魔導士のものではないのは確かよ。あれは死者の門の前で囚われた魂の集合体だったわ。そう私のように一瞬で身体を喪失する亡くなり方をした魂の。だからあの黒き結界は怨念の塊だったはずだ。おそらくは悪魔の仕業だわ。そんな悪魔となんらかの契約を結んだものによるものだわきっと。
そのことに気付いたわたしはアサミにその哀れな魂が封印されていた容器の蓋を再び開けさせる為に矢を狙わせたのよ。でも失敗だったわ」
「それってどういうことなんだ? 容器の蓋が開いたから結界を構成していた魂が戻っていったのではないのか?」
「それが、アサミの魂が邪悪すぎたのよ! アサミの魂には大罪を犯した者の魂が宿っているのよおそらく。なぜならあの容器を壊せるのは作り出した奴よりも邪悪な存在しかないはずよ」
「そういうことは容器と一緒に魂も?」
「ええ蒸発したわ。でも万物の魂は霊的なものだから完全に破壊されたわけではないわよ。でもあそこまで細かくなったら・・・再び生命の魂として生まれ変わるのは難しいかもね、生まれ変わるにしても気の遠くなるような時間がかかるはずよ。それにもう、この世界には転生することはないと思うわ。本当にあんな風にできるだなんて、アサミの魂は恐ろしい!」
その言葉を聞いたアサミはさらに泣き出してしまった。いくらみんなを守るためとはいえ、哀れな魂をこの世から消し去ってしまった事に打ちのめされていた。
「ちょっと待ってよ。アサミって娘の魂とはいったいどうなっているんだよ? 邪悪なものとはいっても魂はみんな平等であるはずじゃないのかよ!」
ヴァークロウは口をはさんできた。魂については迷信深い事は色々いわれているけど、魂は少なくとも多少の善悪はあってもそんなに格差があるとは聞いたことがなかったからだ。
「ええ、平等よ。でもアサミの魂は特殊なのよ。邪悪な魂を封じ込めるために別の魂が融合しているのよ。二つで一つの魂なのよ彼女は。彼女の魂の正体ははっきりしないけど、そのうち分かるときが来るかもしれないわ」




