207.黒き結界
タクヤの目の前でサクロスに化けた者が正体を現そうとしているとき、、フィルビー、ヴァークロウ、そしてアサミの三人がタクヤとエヴァ・エリが閉じ込められていると思われる階層におりていた。
この階層は太陽の陽がなくても養分と水分があれば成長する白っぽいコケのような植物で覆われていた。その植物はまるでクッションのようにふわふわとしているので、足を置いたとたん反発してジャンプしてしまうので、歩きにくかった。
「奴の目的ってなんなんだろう。奴はただの快楽殺人鬼だろ? なのに俺たちをおびき出そうとしたり消滅爆雷を製造させたりと、イメージ違わねえかよ!」
「ヴァークロウ君、それは分からねえ。もしかすると奴以外に親玉がいるはずじゃないかな。だいたいダンジョンにいるだけなら外部と繋がりを持つことは容易じゃねえんだぞ。
ここにあった工房の製品もだからこそ高価で取引されていたんだからな。でも、それも終わりだけどな・・・」
フィルビーは残念そうに言っていたが、それは工房の職人が全て斃されたからだ。一方アサミはまだあのような残虐な場面に遭遇して感じた爽快な気持ちの正体を考えていた。まだ人間だった時に感じたことのない感覚についてだ。
父が刑事訴訟法の教授だったので、実家の書棚には参考資料として様々な殺人事件を記憶した書物が数多くあったが、それを貪り読んでいたことがあった。そこには残虐な手口、身勝手な動機、そして筆舌つくせない被害者の遺体への残虐行為・・・
その本を読んでいたら自分の心の奥深い所で喜々としている何かを感じている事に気が付いてしまい、そういった事にはかかわらなくないと思い、結局父が勧めてくれた法曹界への道を断ってしまったのも、万が一にも快楽犯罪者と関わりを持つのを避けたのが理由だった。
アサミはどうして自分の中に残虐な事を喜ぶ自分いるのかを知りたくなっていた。たとえそれが恐ろしい事実だとしても・・・そんなことを思っていると目の前に黒い光の壁のようなものがものが出現した。
「気を付けろ! それは闇の魔導士が用いる呪詛の黒い結界だぞ! それに触れたら全身が腐敗するぞ!」
ヴァークロウ・ラヴェルスの絶望に満ちたような叫び声があたりに広がっていた。その黒い光の束は怪しい輝きを放ちながら三人に向かっていた。彼は.キュリットロスの方に聞いていた。
「頼むよ! あんた歴戦の勇者と一緒に戦った甲冑なんだろ! なにか方法はねえのかよ!」
すると.キュリットロスは意外な事を言い出した。
「それは、アサミに覚醒してもらうこと! それには危険が伴うけど」




