206.タクヤの疑念
タクヤはサクロスに対し疑念を持っていた。さっきから暇をもてあそんでいるのか、いろいろな話をするのに仲間のことを一切話さないからだ。こちらはアサミやフィルビー、ルンファの事を話すというのにである。
「それにしても、ダンジョンでモノ探しとはギルドも変な試験を課したものだな。だいたいダンジョンで探すものといえば財宝が定番なのにさ」
目の前にいるサクロスは少し楽しそうに話していたが、拉致され監禁されている人物とは思えないほどだった。しかも身体から少し甘いが生臭いといった変な香りがしていた。
「あんた、さっきからそんなに楽しげだけど仲間が心配じゃないのか。それに変な匂いがするし身体から!」
タクヤは少し声を上げて言ったら、サクロスは一瞬驚いたような表情をしたが、何かニヤニヤしはじめた。
「その匂いはそこのエヴァ・エリからじゃないのか?」
そう言ったとき、腰のカイムの剣が熱くなり始め、エヴァ・エリも何かおびえ始め、彼女の心の声が聞こえてきた。
”タクヤとやら。そいつは人間の皮を被った獣だ!”
そしてカイムの剣の柄を持った瞬間、サクロスの表情が一変した。
「もう隠すこともないなあ。お前を囮にしてアサミを呼び寄せるつもりだったのに」
サクロスの表情は獣のように恐ろしいものになったが、その皮膚は青白くなり死人のようになってしまった。
「囮だと? それならなんでアサミを先に拉致しなかったのか、いまの俺みたいに! そんなの許せねえ卑怯だぞ」
タクヤがそう言ったが、奴の行動に矛盾と思える点がそれだったからだ。あの時攻撃姿勢を取っていなかったのだからアサミを拉致するのは難しくなかったはずだったからだ。
「それはなあ、俺にはアサミを直接触ることが出来ないんだよ。それに目の前でお前を殺したら制御不能になるほうが恐ろしいからなあ」




