203.殺戮の場でアサミは
ダンジョン内にある工房。それは外界から隔絶された空間であった。いまアサミの目の前に転がっている遺骸はそんな世界に訳あって閉じ込められていた人たちの哀れな末路だった。どうしてそんなことになったかの理由はわからなかったが、この人たちが何か悪い事をしたわけではなさそうだった。これが、もし快楽殺人なら恐ろしいとしか形容しようがなかった。
それなのにアサミは比較的平気であるばかりか、少し心の奥底にもう一人の狂気の自分が興奮しているような気がしてならなかった。
「なぜなの? こんな許されるはずのない事が起きているというのにわたしは何も怒りを思えないのはなぜなのよ!」
そんなアサミを見てフィルビーは何かを気がついたかのように、近づいてきた。
「アサミ、君はなんか困惑しているようだね。こんな惨劇の場なのに平気でいられる自分を」
「はい」
「普通は逃げ出すはずなの、そうしていられるのを」
「ええ」
「聞いていたよ、君は前世でなにか大きな罪をおかしているようだと。それが何なのかも」
「え?」
「それについては、今は言ってはいけないと言われているのでいわないけど、ただ確かなのは誰かの生まれ変わりであっても、もう同じものではないんだと。
だから影響を受けないようにしなければならないのだと。まあ、前世の事がこれから起きることに関わってくるんだから」
「なんですっか、それは?」
「それは・・・もうすぐわかることさ。ただ、悪いことにはならないそうだ」
「なんで、そんなことがわかるのですか?」
「どうも、君たち二人は神によって約束された二人だからさ。だからご加護があるようだね。それが何を意味するのかはわしも知らないけど」
フィルビーが言うことは何の意味なのか、わからなかったが前世の因縁か何かがこれから関わってくるのだけは間違いなさそうだった。
その間、ヴァークロウ・ラヴェルスは工房内を捜索していた。ウィンギウム・チャガスの手かが利を探していた。工房内には職工の遺骸だけでなく製作中の魔道具も散乱していた。しかも多くが破壊されていた。その残骸はうず高く積み重なっていた。
「フィルビーさん。この工房で作っていた魔道具って攻撃系のものだったようだけど。なんで執拗に壊しているんだ? しかも作っていた職人も」
そういいながら探っていたところ、残骸の下から石版が出てきた。それを見たヴァークロウは驚いた声でいった。
「まじかよ、これ!」




