202.ウィンギウム・チャガス
「ウィンギウム・チャガスってやつはなあ、魔導士の中でも最低レベルの奴だった。依頼主の指示は守らないのは日常茶飯事、そればかりか勝手に財産を取ったりするし、ゆすりやたかりは当たり前。時には悪い奴らとグルになる事しばしばったわ」
キュリットロスが語るウィンギウム・チャガス像は散々だった。悪党そのものだったが、それがなぜ妖怪になったというのだろうか。
「まあ、魔導士の中には悪い奴もいるのは、いつの時代のことだけど、あいつは魂を悪魔に売り渡したんだよ。それで自分の欲望を満たそうとしたわけだけど、乗っ取られたんだよ身体を! それで妖怪になったわけなんだ。
それで妖怪になってからというもの、各地のダンジョンで潜んで時に快楽殺人をするようなったんだ。そうそう妖怪になってからは寿命はほぼ永遠、身体も乗り換えるようになったからやっつけられても、いずこかに逃亡するので根本的に消滅できないんだ。しかも悪いことに退治されるたびに性質が変化しているようだ。
でも疑問があるのだよ、ラルゴス・ラヴェルスさんと一緒に戦った時。あの時のわたしのマスターはシフォンヌだったけど、あの時は消滅させることは叶わなかったけど、もう百年は復活できないほどのダメージを与えたはずなのに・・・それなのに凶悪になって復活しているようね。もしかすると何者かの助けを受けたのかもしれない」
キュリットロスは長々と話したが、どうも彼女が知っているウィンギウム・チャガスとは異なる存在に変化しているようだった。
「キュリットロスさんよ。退治するにはどうすればいいのですか? アサミを剣士にしたのですから何か方法でもあるのですか? それになにかお手伝いすることがないですか」
フィルビーは不安そうに聞いた。彼は魔導士といってもどちらかといえばトレジャーハンター志望で凶悪な妖怪を退治するようなスキルを持ち合わせていなかったからだ。
「本当の事をいうわ。たぶん、ここにいる三人では奴にはかなわないわ。奴のような妖怪を退治するのはあなたたちのレベルでは無理よ。せいぜい撃退するのがせいいっぱいよ。とりあえず魔導士ギルドの攻撃隊が派遣されているようだから、それまで持ちこたえましょう」
そういわれ三人は先ほどの無残な遺体が散乱している工房へと戻っていった。そこは遺体が傷み始めているのか死臭が漂っていた、それには思わずヴァークロウが吐いてしまった。
「おやじさんがその姿を見たら嘆かれるよ。おやじさんの跡をつくつもりなら耐えなさいよ!」
キュリットロスにヴァークロウが叱責されたけど不思議とアサミは平気だった。それを不思議に思ったヴァークロウが聞いてきた。
「お嬢さんよ、あんたはこんな修羅場を目の当たりにしても平気なのか? 見たところ歴戦の勇者というわけでもなさそうだし」
そういわれアサミははっとした。なんでわたしはこんな地獄のような殺戮現場をみても平気なのか。しかもなぜか生理的に受け入れてしまっている自分に驚いていた。
「わからないわ・・・でも、このような光景をはるか昔に自分の手でやってしまったような気がするわよ。でも、わたしは殺されたことはあっても人を殺めた事などないはずなのに・・・」
アサミは自分の心の奥底に眠る何者かがそうさせているのではないかと、恐怖を感じていた。




