201.触らないで、それはセクハラよ!
ヴァークロウが言ったはぐれ魔導士の妖怪ウィンギウム・チャガスに反応したのはキュリットロスだった。もっとも今はアサミが着用している女剣士甲冑に「憑依」しているような状態なので、驚いてしまった。
「ウィンギウム・チャガスか、厄介よね。あいつは徐々に活動していって最後にはすべてを破壊するから」
「そうだ、親父に聞いた話じゃシロアリのように内部を破壊してしまうから。それにしても意志を持つ甲冑とは噂通りだな、触ってもいいか」
そういってヴァークロウはアサミの甲冑をまじまじと見ていた。アサミの体形は胴衣を着用しているときの方が女性らしい体形が強調され。男は誰でも魅了されるからだ。いまの姿は露出こそ少ないが、優美な曲線が強調され、表面も七色に光る宝石のような輝きを発していた。
どんな素材で出来ているのか? そんな興味からなのか、とうとうアサミの腰の部位を触ってしまった。垂の部分であったけど破廉恥とも思える行動だった。
それでアサミは思わず頬をひっぱたいてしまった。いくらタクヤよりも幾分イケメンといっても許されることじゃなかった。まあタクヤでも同じことをしたら嫌だったけど、まだそっちのほうがましだった。
「やめてください、セクハラですそれは!」
「セクハラ? 意味が分からんが、触わってすまん。それにしてもキュリットロスの胴衣とは、伝説的な魔道具のひとつが復活したとは。親父の奴だったら喜んで見に来るだろうな。親父も一緒に仕事をして助けられたと言っていたから」
ヴァークロウの言葉にキュリットロスはしばしの沈黙の後思い出したかのように言い始めた。それは少し懐かしそうだった。
「あなたの父は多分、ラルゴス・ラヴェルスさんか? あの人は駆け出しだったけど、あれはもう40年もまえか。そうか息子もいたんだね。
それにしても、因縁よね。わたしとあなたの父と戦った相手と一緒とは」
「そうだ、その時はどうなったのか? キュリットロスさんよ」
「あの時は・・・そうだ。今回と同じようにとある公国のダンジョンの魔物が凶悪化して地上の市民に危害を加え始めていたので、派遣されて・・・その時は本体を取り逃がしてしまったんだわ。でも、あいつは一人でダンジョンを見回っているような兵士なんかを襲うようなやつだった。そう、快楽のために人を殺める奴だった。
だけど、今回のように魔導士をおびき寄せるような事をしたり、また工房の職人を虐殺したりするとは、明らかに性質が異なる。行動に快楽以外の目的がある」
「そのウィンギウム・チャガスって、何者ですか? たしかにタクヤをさらっていったけど、どんなやつですか?」
アサミは自らの甲冑に語り掛けるように胸部の胸のふくらみの部分をさすっていた。はっきりはしないが、いまのところキュリットロスの魂が籠っているのはそのあたりのような気がしたからだ。




