200.ヴァークロウ・ラヴェルス
結界から出れなくなったアサミら三人は元来た道を仕方なく戻った。結界が厚みをましてきていられなくなったからだ。それにしても今回の一連の出来事はいったい誰が何のために企てたものだろうか見当もつかないことであった。
だが、アサミからすれば最も心配なのはタクヤの事だった。あっという間に姿を消してしまったので、最悪な事態を考えざるを得なかった。
「アサミ、とりあえずタクヤを探そう! エリン公爵は撤退を指示していたけど、それが叶わないのなら、彼を探そう。もしかすると今回の一連の出来事を引き起こした奴と会えるかもしれない」
フィルビーはそういってアサミを元気付けようとしたが、そこに横やりをいれたのがヴァークロウ・ラヴェルスだった。彼の班は二人が殺害され一人も瀕死の状態だった。それにしても彼はなぜ無傷なのか? 疑問に思ったアサミは聞いてみることにした。
「ヴァークロウさん、失礼だと思いますが他の方は亡くなったり傷ついていたりするのに何故無傷なのですか?」
「それはお嬢さん、私も切り付けられたのですよ、ほら」
そういってヴァークロウは魔導士着の裾をめくりあげた。そこには竜の鱗のようなもので覆われていた。
「これは。龍狼獣の鱗を寄せ集めた防具ですよ。大抵の剣なら弾き返せる代物でして、うちの家宝なんですよ。だから何とか命拾いをしたんだけど、同じように着ていた奴はこの有様だから・・・」
そういって、筋肉組織が露出した無残なサクロスの遺体に目をやって、着ていた服で覆っていた。
「こいつとは、幼い頃からの友人でもありライバルでもあり、そして同志だったんだ。今回の研修が終われば、こいつの親父のところで一緒に修業するはずだったんだが・・・残念だ」
その声には無念な情が籠っていた。ヴァークロウはまだ息はあるが、自らでは動けない男の懐から一冊の本を取り出した。それは各地のダンジョン内に生息する妖怪についての書物だった。そのいくつかの項目を確認してあることを言いだした。
「おそらく、今回のたくらみは、おそらくははぐれ魔導士の妖怪ウィンギウム・チャガスかその子孫につながる何者かだと思われる」




