198.脱出するには
アサミをはじめゼイリオスに誰も声をかけることが出来なかった。工房内には陰惨な光景が広がっていたが、彼にすれば少し前まで普通に暮らしていたところが、こんなに荒廃してしまったことに強い衝撃を受けているのは間違いなかった。
「君、とにかくここを脱出しよう。そういえば他にこのダンジョンには住民はいるのか?」
フィルビーがようやく語りかけたが、そういったのももしかすると他にも生存者がいるかもしれないとおもったからだ。でも僅か三人の魔導士見習いでは何もできないであるが・・・
「それは・・・わからないです。わいたちがここに暮らしてから・・・よく覚えていないのですが、この工房にいたのは、どちらかといえば他の町から追放された者ばかりでして、異能すぎるからと」
「やっぱり、噂通りだったんだ。異能集団だったんだ。君らはもしかするとそこにいるサル娘と同じヴァリンガリ族じゃないのか?」
「そうだよ、そういえばそこの女はどこから来たんだ? 魔導士になれるというのなら?」
「ルンファというのよ! あたいは! あたいは樹海奥深い村で生まれ育ったんだけど、たしか町に出て行って迫害された支族がいたと聞いたことがあるわ」
三人が驚異的な身体能力を持ち、高度の魔道具を作ることが出来るヴァリンガリ族の話で盛り上がったが、アサミは切羽詰まった状況にあることに気が付いた。
「みんな! その子を安全なところに脱出させないといけないでしょ! 早く結界の手前まで戻りましょ!」
その言葉を聞いて一行はとりあえず戻ることにした。しかし、途中で思わぬことが起きてしまった。
それからしばらくして結界の外で待つエリン公の元には各地から魔導士ギルドの先遣隊が到着していた。翌朝にはインヴァラ公国に要塞馬車が数多く到着するはずだった。
「ヴァークロウ・ラヴェルス班と連絡が取れないけどどうなっているのだ?」
そう怒鳴っているのは魔導士ギルドから派遣されてきた戦闘指揮官だった。しかし中の状況がわからないから何も出だし出来なくってもどかしかった。しかもダンジョン内部の住民が虐殺されている情報もあるのでなおさらだった。
その時、なかから毛むくじゃらの男女が大きなけがを負って結界か内部から戻ってきた。ルンファの方を持ったゼイリオスだった。
「一体、何があったの・・・?」
「閉じ込められたのよ! フィルビーさんもアサミもタクヤも! あいつは恐ろしい!」
ルンファの服は赤く染まっていた




