194.エヴァ・エリの戯れ
エヴァ・エリはうなり声を上げながら寝返りをうとうとしていた。見た目は大きくてもそのしぐさはネコそのものだった。タクヤは昔実家で飼っていたネコの事を思い出した。たしか寝覚めて起き上がろうとしたとき前足を伸ばしたことを。
「まずい、逃げなきゃ! 寝返りを打たれたら下敷きになってしまう!」
とっさにタクヤはサクロスに叫んだ。しかしここは穴の底みたいなところ。にげる場所といえば壁ぐらいだった。必死に二人はよじ登っていた。
その間にもエヴァ・エリは手足を伸ばし寝返りを打って気持ちよさそうに背中を床にこすりつけていた。そして喉を鳴らしたが閉鎖された空間なのでものすごく反響した。その時サクロスは指を滑らせエヴァ・エリの顔の前に落ちてしまった。そしてエヴァ・エリの腕の中にすっぽりと入ってしまった。
サクロスは次の瞬間、悲鳴を上げた。エヴァ・エリの大きな口が開いたからだ。どうも食われると思ったらしかった。ネコと同じ姿でもこのサイズなら人を食うのも動作もないないことのように思えた。そして次の瞬・・・
「やめてくれ! ザラザラしている! おろし金にでも顔を撫でられているみたいだ! 気色地悪い!」
ラクロスの顔はエヴァ・エリの巨大な舌で舐められていたのだ。ザラザラしたネコと同じ舌だから堪らなかったようだ。そしてサクロスを両前足で掴むと頬ずりし始めた。どうもこれは戯れで甘えているかのようだった。
「エヴァ・エリ! 頼むからやめてくれよ!」
ラクロスのほうは泣き始めたが、タクヤはしかたないなあと思っていた。でも出来ることといえば見守っているだけだった。それからラクロスからすれば命に直ちに支障はないが気持ち悪い時間が過ぎていった。
それから何分かたったあと、ようやくエヴァ・エリの目が開き、巨大なサファイアのような瞳を見せた。その瞳は本当に宝石のようだった。
「なんだ、あんたたちも捕まったわけなの? なんだかわからない奴に」




