189.エリン公爵とメイファン
結界の入り口でエリン公爵と門番のヒヴァール、そして「判定役」のメイファンが椅子に腰かけて状況を傍観していた。メイファンは「筆頭統領の夜食番」所属の諜報部員なので、アサミらが気が付かない手段で二組の研修魔導士を密かに監視していた。
「メイファン、どちらもメンバーが一人ずつ欠けてしまったけど大丈夫なの? うちのエヴァ・エリちゃんも大切だけど、あの人たち動揺してそれどころじゃなくなるのではないの?」
エリン公爵はメイファンを呼び捨てにしていた。
「叔母様、大丈夫ですわ、あの研修生たちは優秀なはずですから。それにしても叔母様の魔道力なら三日もあれば問題解決したのじゃないの?」
「そうねえ、わたしが魔導士だったのはもう三十年前のことだけど、今だってその気になれば・・・でも、小さな国とは言っても国家元首のわたしがダンジョンに入れないぐらいわかるでしょ! まあ最近物騒なのようちのダンジョンも」
「だからといって、研修生たちにわざわざ振らなくてもいいし、それも格安でやらそうというのも、叔母様らしいことですわ。それにしても、ここのダンジョン。結構やばいことになっているんじゃないの?」
「そうよ。各地で起きているような変事がここでも起きているようなのよ。ダンジョン・マスターは何も云わないけど、どうもダンジョンで不穏な動きがあるようなのよ。その一環がうちのエヴァ・エリちゃんがいなくなったことだと思うよ。
うちのヒヴァールさんが隙を見せている間に連れて行ったんだと思いますわ。そうすると結界をいとも簡単に出入りできるダンジョンの住民がいるのは間違いないようよ」
エリン公爵の後ろからお茶を注ぐためにヒヴァールがヤカンを持っていたが、彼は少し不機嫌な顔をしていた。
「閣下、このわしがはめられたというのですか? ここで三十年も門番をしてきたわしを出し抜くなんて・・・」
「ヒヴァールさん。あなたの能力はわかっていますわ。門番としては優秀な事も。あなたが飲んだお酒の中に仕掛けがあったんだと思うわ。でも、そうなると既にダンジョンの住民が地上で暗躍していることになるわね。
メイファン、悪いけど追加で魔導士の派遣を要請するわ。研修生がダンジョンの何者かに連れ去らわれたんだから」




