184.ダンジョンを探すためには
この世界ではダンジョンはちょっとした領主の居城や邸宅にはあるものだし、ない方が珍しい方だ。しかもダンジョンの中には観光地化して木戸銭で儲けているところもあるし、魔導士の訓練施設になっているところも少なくなかった。
しかし、このダンジョン・デ・サンミュアッツはダンジョン・ガイドブックに名前はあってもどんな所かを説明しているものはなかった。それもこれも事実上非公開なので当然であったが。そもそも非公開なのは管理人を雇う金もないし観光客が訪ねることも稀な辺境の地にある公国のダンジョンだからだ。
地上にあるはずのダンジョンにつきものの巨大な地上部も存在しないし、まったく情報など流れていなかったからだ。しかも、それはエリン公爵が隠そうとしたわけではなく誰も興味を持たなかっただけであった。こんな公国にあるダンジョンなど大したものはあるはずなかった・・・はずだった。
「ここのダンジョンはわしたち行商人のなかでは有名な工房があるので知られていたのだ。ただ、さっきの閣下のおばさんは一切関係ないそうだ。どうもダンジョンの中にいる職人が時々市場に売りに来ていて、いつもサンミュアッツから来たと言っていたそうだ。ただ、サンミュアッツに来てみても誰もダンジョンの入り口を教えてくれなかったそうだけど、初めてじゃないかな入るのは商人は」
ファビューは少し興奮気味だったけど、この人は魔導士になりたくてきたはずなのに、なぜ行商人の話になるのだろうと、タクヤは突っ込みたくなっていた。
目の前のダンジョンへ続く螺旋回廊はグルグル回りながら地下深い所へと降下しているのは間違いなかった。しかも壁にはなにやら階数らしいものがかかれていたが、どんどんその数字は大きくなっていった。
「ファビューさん、さっきの紙だけど当てでも書かれていたのですか?」
タクヤはそういったが、今回の研修ではなんら役に立っていないと思っていたところなので、すこし聞いてみたくなったのだ。
「当て? ダンジョンマスターのことか? そうだ、そうだよ。なんでも、このダンジョン内で細々とだけど素晴らしい魔導士の道具を作っている職人集団の長だそうだ。理由はわからないけど、このダンジョンの最下層にいるそうだ。しかも本当のダンジョン・デ・サンミュアッツの支配者だそうだ。だから、接触すればオオネコの居場所もわかるかもしれないし。なんだってここは巨大な迷路みたいだそうだから」
「ダンジョン・デ・サンミュアッツの支配者? ここのダンジョンってさっきの閣下のおばさんが治めているんじゃないの?」
「あの閣下は表向き。本当は高度な自治組織が支配しているそうだ。でも、こうやって奥深くまで侵入したらどんな反応を示してくるのか、不安でもあるがね」
ファビューの大きな体はこころなしか震えているようだった。




